宗教団体を解散させるのは極めて困難

 過去には、地下鉄サリン事件の翌年に公安調査庁が、オウム真理教の解散指定の請求を公安審査委員会に行ったことがある。結果的に、適用は見送られることになるが、ここで公安調査庁が申請の証拠資料に出してきたものの中に、統一教会系の新聞『世界日報』の記事のコピーがあったことはすでに詳報している(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/71544)。

 ところが、これで調子にのったのが、オウム真理教の後継団体だった。すでに宗教法人法による解散命令は確定し、事件の被害者らによる申し立てで教団は東京地裁より破産が宣告されていたが、破防法による解散指定がなかったことで、教団の後継団体は息を吹き返す。

 残った信者たちが、「まだオウムやってます」とプラカードを掲げて、白昼の繁華街で踊るパフォーマンスをしてみせたり、東京の秋葉原で正体を隠したパソコンショップを経営しはじめたりした。教団が新しい活動拠点を取得しては、各地の住民と軋轢を生み、激しい追放運動も相次ぐ。あまりの傍若無人ぶりに日本中が憤慨して、たちまち社会問題化した。そこでオウム真理教の後継団体を念頭にあらためてできあがった法律が、前出の団体規制法だった。

 つまり、宗教法人法に基づく「解散命令」が出たところで、法人でなくなるだけのことであって、その組織や構成員はそのまま活動を続けることができる。任意の宗教団体として存続し、組織そのものを強制的に解散させることはできない。統一教会の違法行為や反社会的な行動を封じ込めようとするなら、新たな法律が必要になる。

「解散命令」という言葉だけが独り歩きしているようだが、組織や団体を根本から打ち砕くようなものではない。宗教団体を解散させることなどできない。そのことをまず理解してからの議論が求められる。