米ブーム・スーパーソニック社が開発中の超音速機「オーバーチュア」。洋上だとマッハ1.7、陸上だとマッハ0.94で飛行する。

8月に米アメリカン航空が、米新興航空機メーカーのブーム・スーパーソニック社が開発している超音速旅客機「オーバーチュア」を20機を購入する契約を結んだ。同機は、米ユナイテッド航空が2021年に15機を購入すると発表しているほか、ブーム社には日本航空も出資している。短時間での空の旅を実現する超音速機は広がるのだろうか。

(杉江 弘:航空評論家、元日本航空機長)

コンコルドはなぜ失敗したのか

 米ブーム・スーパーソニック社が開発中の超音速機「オーバーチュア」。2024年に生産を開始し、25年にロールアウト、29年に乗客を乗せた商業フライトを予定している。

 その諸元は洋上でマッハ1.7(約2100km/h、陸上でマッハ0.94=約1160km/h)、航続距離は7871km、乗客数65~80人(全席ビジネスクラス)、運賃は現行ビジネスクラス並みと言われている。

 マッハ1.7という速度は現在最速の民間航空機の2倍の速度で、マイアミからロンドンまで5時間弱、ロサンゼルスからホノルルまで3時間で飛行でき、世界で600以上の路線を半分の時間で飛行できるものだ。

 この機体については、すでにユナイテッド航空が21年6月に15機を確定発注、35機のオプション(仮発注)として追加購入できる契約を結んでいる。22年8月にはアメリカン航空も最大20機の確定発注と40機のオプション契約を結んだ。

 また日本航空は17年12月にブーム社と提携して1000万ドル(当時の円換算で約11億2500万円)を出資し、将来の優先発注権を20機分確保している。

 多くの読者はオーバーチュアのニュースを聞いて、「本当に商業フライトとして成功するのか?」と疑問を持つことだろう。

 それは当然だ。脳裏によぎるのは、あの超音速機コンコルドの結末があるからだ。そこでコンコルドが商業運航に失敗した原因と課題を振り返り、オーバーチュア成功の可能性を考えてみたい。