6月29日、スペインのマドリードで開催されたNATO首脳会議に合わせて開催された日米韓三カ国首脳会議に出席した尹錫悦大統領、バイデン大統領、岸田文雄首相(写真:AP/アフロ)

 6月29~30日までスペインのマドリードで開催されたNATO首脳会議は、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領にとって多国間外交デビューの舞台となった。

 尹大統領は、今後5年間の韓国外交のビジョンを示そうと意気込んでスペインに乗り込んだ。韓国メディアでは、「日韓関係の改善」を主な外交懸案としている尹錫悦大統領が、NATOで日本の岸田文雄首相との初対面を通じて日韓関係の改善に肯定的なモメンタムを設けることができるのではという期待を込めた見方も多かった。

 ところが蓋を開けてみれば、日韓関係に関して肯定的に評価できる結果は何もないばかりか、NATOでの両国首脳の様子を伝える日韓政府の発表にも相当な温度差があることが浮き彫りとなり、日韓関係の深刻さを改めて確認する場になってしまった。

もはや歴史問題は絶対に「棚上げ」できない難題に

 3泊5日の日程でNATO首脳会議に出席した尹錫悦大統領は、計9カ国の首脳らとの二国間会談を含め、計14の外交日程を消化する強行軍を行った。帰国する専用機で記者団と懇談会を開いた尹大統領は、「数多くの日程の中で韓米日首脳会議が最も意味があった」とし、対日外交に対する構想を次のように明らかにした。

「歴史問題と未来問題は、すべてテーブルに出して一括解決していかなければならないと私は強調してきた。両国間で歴史問題の進展がなければ、懸案と未来の問題についても論議できないという考え方は避けなければならない。韓日両国がすべての懸案を一緒に論議することができ、未来のために協力することができれば、歴史問題も十分に解決していくという信頼を持っている」

 これは尹錫悦大統領が政界への転身を宣言した当時から繰り返してきた主張だが、残念ながら現在の日韓関係は歴史問題と未来問題が分離できる段階を通り越してしまった。特に韓国裁判所の日本企業に対する元徴用工賠償判決は日韓間の最大懸案となり、日本は日韓首脳会談開催の前提条件としてこれに対する解決案提示を韓国に要求している。歴史問題の進展がない状況では日韓関係が一歩も前に進めない状況になってしまったのだ。