(写真:ロイター/アフロ)

 連日の猛暑で電力不足がクローズアップされる中、日本国内で「サハリン2ショック」が収まらない。

 6月30日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、極東地域の日ロ共同天然ガス事業「サハリン2」に新たに事業体を設立し、すべての資産をその事業体に移行するという大統領令に署名した。権益を求める会社は、1カ月以内にロシアに再申請を行うようにとのことである。その際の条件などは不明だが、日本側がとても受け入れられないような条件を突きつけられる可能性がある。

「サハリン2」は、ロシアのガスプロムが50%+1株、イギリスのシェルが27・5%-1株(2月に撤退を表明済み)、三井物産が12・5%、三菱商事が10%の権益を保有している。2009年、「中東一辺倒のエネルギー輸入先を分散させる」との日本政府の肝煎りで稼働した。生産量の約6割をLNG(液化天然ガス)として日本向けに輸出しており、日本の輸入LNGの約9%にあたる。

サハリンのプリゴロドノエ港で「サハリン2プロジェクト」から液化天然ガスの貨物を積み込むタンカー(写真:AP/アフロ)

サハリン2からの撤退、3月時点で覚悟していた岸田首相

 日本には翌7月1日にこのニュースが伝わり、それから数日、岸田文雄政権は、日本国内に広がる「サハリン2ショック」を抑えるのに躍起になっている。

 実は私は、シェルが「サハリン2」からの撤退を表明した直後の3月初旬、岸田政権のある関係者から、こんな話を聞いていた。

「三井物産と三菱商事は『絶対に撤退しない』と強情を張っている。また萩生田光一経産相も、『権益を日本が手放せば、第三国に渡ってしまい、ロシアを制裁することにならない』と述べている。

 だが今後、ロシアのウクライナ侵攻は長期化が予想され、それに伴って西側諸国のロシア制裁もエスカレートしていくだろう。そうなるとアメリカやEU(欧州連合)と足並みを揃える日本も、『サハリン2』からの撤退を余儀なくされる。

 要は『サハリン2』からの撤退は、時間の問題なのだ。これから岸田政権が行うのは、何とかして日本が撤退を表明する時期を、7月の参院選の後に持ってくるよう、各方面に根回しすることだ。同じ撤退表明でも、参院選の前と後では、岸田政権が受ける影響は大きく違ってくる」

 つまり岸田政権としては、いまから4カ月も前に「サハリン2」を手放すだろうことを覚悟していたのだ。