過激ツイートを封印した薛剣・駐大阪中国総領事 (総領事館HPより)

(ジャーナリスト:吉村剛史)

 中国の習近平国家主席は7月1日の香港返還25年記念式典に出席するため6月30日、香港入りした。

「50年不変」とされた香港の「一国二制度」は、強権的姿勢を強める中国の影響力の前で大きく変容。今秋の党大会で異例の3期目を目指す習氏にとって、香港での成功という実績をアピールし、「台湾統一」への地歩を固めたい思惑が垣間見られる。

 これに先立ち日本では6月16日、大阪で日中国交正常化50年の節目に合わせた「第5回西日本地区日中友好交流大会」が両国関係者によって開催され、「戦狼外交官」として知られる薛剣(せつ・けん)駐大阪総領事も出席。しかし最近は名物の過激ツイートを封印。習氏の顔色をうかがい、節目の年に余計な波風を立てまいとするピリピリムードを漂わせていた。

衣の下にチラつく鎧

「かつての指導者や各界の有識者の皆さんが困難を乗り越えて国交正常化を進めました。中日関係は複雑な局面を迎えていますが、両国民にとって友好な関係がいちばんの願いであることは変わりがありません」

「平和、友好、協力こそが両国が共存する唯一の正しい道です」

 6月16日午後、大阪市内のホテルで開かれた西日本地区日中友好交流大会(中国駐大阪総領事館、大阪府日中友好協会共催、中日友好協会協賛)。薛氏が事前にツイッターで式次第を公開し、「一緒に盛り上がろう!」と呼びかけていたことから筆者も会場に赴いてみた。

第5回西日本地区日中友好交流大会であいさつする薛剣・駐大阪中国総領事=6月16日午後、大阪市中央区(吉村剛史撮影)

 関係者によると会場には自治体や企業関係者、友好団体などから日中双方で200人余が出席。公開されたオンライン中継もほぼ同数が視聴したといい、計約500人が見守る中で開幕のあいさつに立った薛氏は、「中日友好 敬隣永安」と大書した色紙を手にするなど、上記のように淡々と「中日友好」を語った。「中日友好 敬隣永安」の文字は引き出物の大阪名物「みるく饅頭 月化粧」にまで配されるという芸の細かさだ。

「中日友好 敬隣永安」と大書された大会引き出物の大阪名物「みるく饅頭 月化粧」=6月16日午後、大阪市中央区(吉村剛史撮影)

 また、会場外で行われた日中交流の軌跡をたどる写真パネル展でも、来場者らに自ら写真の解説をしてみせるなど終始ソフトムードを演出していた。