「アリの一穴」という言葉がある。「動態清零」(ゼロコロナ政策)という「中国の特色ある不可思議なコロナ対策」のせいもあって、いまや青息吐息の地方金融機関のヤバい実態の氷山の一角が垣間見える事件が、河南省で起こった。
中国には昨年末現在で、金融機関が4602行あるが、その中で「村鎮銀行」と呼ばれる地方の信用金庫が1651行ある。河南省にある4つの「村鎮銀行」――禹州新民生、上蔡恵民、柘城黄淮村、開封新東方の預金者の預金が、4月下旬から突然、引き出せなくなった。この4行は「システムを改良中で一時的に障害が起きている」と説明したが、約2カ月経った現在でも、「システム障害」は続いたままだ。おまけに銀行も店を閉じてしまった。
「これって銀行の破綻じゃないの?」と慌てた預金者たちが、銀行に殺到した。その模様は、たちまちSNSで中国全土に拡散した。
高利率のファンドに中国全土から顧客殺到
この4行は、高い利息をエサに、全国からファンドの預金者を募っていた。例えば禹州銀行では、最低投資額150万元(1元≒20.1円、以下同)で、利息6%。50日後に引き出し可能というファンドを設けていた。
いまどき通常のファンドでは、これだけ短期でこんなに利息が高いものはないので、中国各地からファンドの出資者が現れた。中国はスマホ決済社会なので、スマホでピピピッと多額の投資ができてしまう。というわけで、多くの出資者が被害に遭ったというわけだ。
中国は、「動態清零」の影響が大きく、4月の若年層失業率は18.2%と過去最高を記録した。収入を失った人、給与が減った人などが、なけなしの貯金をはたいて河南省に投資したものが、蒸発してしまったのだ。銀行に殺到するのは当然だろう。