中国の習近平国家主席(写真:新華社/アフロ)

(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)

 中国で3隻目となる空母が進水した。17日のことだ。

 1隻目の空母「遼寧」は、いまロシアの侵攻を受けているウクライナから「カジノにする」として建造途中の旧ソ連の空母を買い取って、空母として完成させたものだ。

 2隻目の「山東」は、「遼寧」に倣った初の国産空母となった。いずれも、艦首がそり上がって艦載機が発艦する「スキージャンプ方式」が特徴で、満載排水量は6万トンとされる。

 ところが第3の空母は満載排水量8万トンを超え、甲板にはリニアモーターによって効率的に艦載機を射出する電磁式カタパルトを装備している。世界でも米海軍の最新鋭原子力空母「ジェラルド・R・フォード」にしか搭載されていないという。ただ、米海軍のこの最新の技術にもトラブルが多く、また、膨大な電力を必要とすることから、原子力でない通常動力で機能するのか疑問視する声もある。

台湾の対岸に位置する福建省

 それよりも驚かされたのは、この新しい国産空母の艦名だ。「福建」と命名されている。6月4日付の日本経済新聞では、進水に先立って「新しい空母は『江蘇』と命名する見通し」と伝えていただけに、余計に驚かされた。

6月17日、上海で進水式を行った中国3隻目の空母「福建」(写真:新華社/アフロ)

 艦名の由来の福建省といえば、まさに台湾から最も近い対岸に位置する中国大陸の省で、地理的には台湾と福建省だけで台湾海峡を形成している。台湾の市民にも、祖先をたどれば福建省に行き着く人も少なくない。台湾企業の進出もめざましく、私がかつて日本人が好んで食べる冷凍枝豆の輸入先の福建省の工場と畑を取材したときには、台湾で生産に成功した企業が中国に進出したものだった。因みに、尖閣諸島で日本の海上保安庁の巡視船に体当たりの“特攻”を仕掛けた中国漁船の船長が暮らしていたのも、福建省の港町だった。事件後に自宅でインタビューしたこともある。