(譚 璐美:作家)
これは国家的な「誘拐」と呼ぶべき行為だろう。
AFP(1月19日付)は、中国が2014年以降、海外在住の中国人1万人近くを強制的な手段で帰国させていたことが、1月18日付の報告書で明らかになったと伝えた。
報告書は、スペインを拠点とする中国人権団体「セーフガード・ディフェンダーズ」がまとめたもので、中国の公安機関が国外で違法な活動を行い、過去2年間で強制的に帰国させられた人は約2500人にのぼり、2014年からの8年間では1万人にのぼっているという。
「キツネ狩り」
中国は「ICPO(インターポール:国際刑事警察機構)」に加盟し、犯罪者の国外逃亡を指名手配する権利を有しているが、各国へ職員を送って個人を逮捕したり逮捕状を発行したりする権限はない。今回の報告書では、対象者は犯罪者ではなく、主として中国を批判したり、海外で反中デモを主催したりした中国人活動家たちだ。
「セーフガード・ディフェンダーズ」(2022年1月18日付)の報告書を精査すると、さらなる詳細な状況が記されている。
同報告書によると、中国国家監察委員会は「監察法」第52条に基づき、海外在住の対象者らを「第六類」の政治犯罪者に分類・追跡調査し、「キツネ狩り作戦」と「スカイネット作戦」という2つの作戦名で、世界120カ国から強制帰国の対象者を選定している。本来は、反腐敗運動の一環で、海外に逃亡した汚職官僚などを帰国させるための制度だったが、実態はその法の範囲を逸脱し、中国共産党を批判した者を強制帰国させるための活動を行っているという。