ブータンの伝統的衣装を着た男の子(写真:AP/アフロ)

(譚 璐美:作家)

 最近、中国は陸地における領土拡張の動きを活発化させている。

 ロイター電(2022年1月14日)によれば、2020年以降、中国は国境紛争が続く隣国ブータン西部のドクラム地域で入植地を盛んに建設し、今年に入って加速させている。ロイターが行った人工衛星画像の分析では、2階建ての建物を含む200以上の構造物が6カ所で建設中だという。これが完成すれば、中国政府は中国人を入植させた後、辺境の管理と監視を強化し、軍事基地化する可能性もある。

「入植地」が軍事基地化する可能性も

 中国が陸地で国境を接する国は14カ国あり、境界が画定せず紛争が続いているのはブータンとインドの2カ国だけだ。

「幸せの国」として日本でも知られるブータン王国の人口は80万人。中国との477キロに及ぶ国境線の画定協議は40年以上も続けられてきたが、未だに合意に達していない。昨年来の中国の強引な入植地建設は、ブータンにとって自国の領土保全だけでなく、主要な同盟国で経済的パートナーでもあるインドにとっても、安全保障に対する重大な脅威だ。

ブータンの国王一家(提供:Royal Family of Bhutan/Action Press/アフロ)

 そのインドとの国境紛争地域でも、中国は攻勢を強めている。

 中国とインドは、3000キロメートルにも及ぶ未画定の国境をもち、1962年に軍事衝突して以来、長年に渡って紛争が続いてきた。それが昨年の12月29日、中国がインドの実効支配する北東部のアルナチャルプラデシュ州の集落や河川、山など15カ所に、「古里」「馬加」など中国語表記による「公式名称」を発表し、入植地を建設していると判明した。カシミール地方でも、国境付近にある中国領チベット自治区のパンゴン湖上に橋を建設中だ。