80年代以降、南シナ海の領有権を強く主張し始めた中国は、住民(漁民)が住んでいるかどうかにも拘った。暗礁に人は住めないと知ると、次には「南沙諸島は二千年来ずっと中国固有の領土だった」、「漁民が昔から漁をしているから、中国領だ」と主張したが、論拠はあいまいで説得力に欠けた。

世界が一致して中国に異を唱えることが必要

 2015年、周辺諸国の反対を押し切り、強引にサンゴ礁を埋め立てて人工島を作り、巨大な軍事基地を建設したことは記憶に新しい。そして実効支配を強める一方、人工島には軍人や軍属などが滞在して「住民」になった。

 法律も制定した。2019年12月に「海島保護法」、2021年1月に「中国海警法」を制定して、「国家の主権や管轄権がおよぶ海上において、外国の組織、個人の不法な侵害を受けた場合は、武器の使用を許可する」と規定した。

 つまり、最初に「中国語名」をつけ、次いで「住民」を入植させ、さらに「法律」を制定するという3つの要件は、いずれも「後付け」であることが明らかだ。

 海洋では、南シナ海の人工島に軍事基地を建設して実行支配した中国が、今度は“お決まり”の手順を踏んで、陸上でも領土拡張を目論んでいるのである。

 世界は一致協力して、中国とブータン、インドとの国境紛争を当事国の二国間協議だけに委ねず、南シナ海問題と同様、中国に対して批判の声をあげ、厳しい監視の目を注ぎ続けることが必要だろう。