(3)人権活動家の董広平は、2000年に「国家煽動転覆罪」で3年の有罪判決を受けて服役し、2014年にも禁固8カ月の有罪判決を受けた。さらに迫害されることを恐れ、2015年にタイへ逃亡して、国連難民高等弁務官事務所から難民に認定された。

 ところが、カナダ政府から入国許可を待つ間、バンコクの移民局に収監されていた時、中国当局が所在を突き止め、タイ政府の官員の目の前で彼に手錠をかけ、移民局から連行。中国へ移送された後、3年の有罪判決を受けて服役し、2019年に釈放された。調べてみると、董広平がタイを出国した正式記録はなく、なんらかの違法な手段で中国へ移送されたことが発覚した。

 その他、タイで失踪した香港の雑誌記者の李新、ビルマで失踪した人権活動家の唐志順、英国籍の李波やスイス国籍の桂民海らは、いずれも後になって中国大陸で拘束されていた事実が判明した。現在では、ヨーロッパ在住のウイグル族もターゲットになっている。

本国移送後は即「処刑」も

 ところで、中国は2020年現在、世界の59カ国と「犯罪人引渡条約」を締結し、すでに50人の中国人犯罪者を引き渡されている(人民ネット日本語版、2020年10月26日付)。

 ちなみに世界の国々をみると、同じ2000年現在、日本は2カ国、フランスは100カ国、イギリスは120カ国、アメリカは70カ国、韓国は25カ国と犯罪人引渡条約を締結している。日本の条約締結数が他国と比べて極端に少ないのは、日本が死刑実施国であることが大きな理由のようだ。