前出の「セーフガード・ディフェンダーズ」がまとめた別の報告書(2022年2月28日付)では、中国の場合、この犯罪人引渡条約に基づくケースでも、犯罪者が中国に引き渡された後、厳しく断罪される事例があると報告している。

 例えば、中国とタイは2国間で犯罪人引渡条約を締結し、引き渡し後に処刑することを禁じているが、タイで逮捕された王建業は中国へ移送された後、即刻処刑された。

 同じくカナダで逮捕された楊峰の場合も、カナダ政府が犯罪者の人権保護を要求したのに対して、中国は公式に外交保証したにも関わらず、引き渡された後、なんの説明もなく処刑された。

日本人であっても他人事ではすまされず

 無論、全ての引き渡し事例がこうした結果に繋がるわけではないが、中国がしばしば国際ルールに違反していることは明らかだ。まして、海外から違法に強制帰国させられた中国人が、その後どのように処遇されているのかは明らかにされていないが、「セーフガード・ディフェンダーズ」の追跡調査では、過酷な拷問を受けるケースも少なくないという。

 コロナ禍で諸外国が感染対策、経済対策に追われる中で、中国当局が水面下で行う国際的な違法活動は年々増加傾向にあるとされる。今、海外から突然、失踪・誘拐されるのが中国人だからといって、他人事ではすまされない。いつ反中的な発言を口にする外国人の身に降りかからないとも限らないのだ。

 世界中で中国当局が公然と他国の国家主権を侵害し、国際法に違反して傍若無人に振舞うことは、まことに由々しき国際問題であることは間違いない。