海外ではサル痘のワクチン接種が始まっている(写真:ロイター/アフロ)

(ステラ・メディックス代表、獣医師/ジャーナリスト 星 良孝)

 新型コロナもそうだが、従来であれば、はやると思いもしなかった感染症が流行する事例が目立つ。その中でも、新型コロナウイルスに続く最新事例がサル痘だ。

 少し前から感染拡大の不穏な空気が流れていたが、世界の非流行地域における感染確定例がわずか1カ月で1000例を超えた。しかも、欧州を中心に、南北アメリカ大陸、アジア、オセアニアにも感染確定例が広がっている、潜在的な感染者も含めると、既に多数の感染者が存在している可能性が高い。

 サル痘は、かつて世界を恐れさせた天然痘とも対比されることが多い。マイクロソフトの創業者、ビル・ゲイツ氏がサル痘に言及していたこともあり、話題は燎原の火のように広がっている。

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 筆者は獣医師資格を持つ立場から、論文を探りながら、サル痘の実像などについて動画で伝えている。

 JBpressにおいても、詳細や最新情報にも踏み込みながら、国内ではあまり知られていない専門的な情報を発信していきたい。

そもそもサル痘とは“猿の病気”ではない

 サル痘は人に感染した場合には3日~1週間ほどの潜伏期間を経て発症する。最初は0日~2週間発熱や頭痛、リンパの腫れ、その後に顔から全身に発疹が広がるのが特徴だ。発疹が突然出る例も報告されている。

 サル痘は“猿の病気”ではない。というのは、自然界でサル痘のウイルスをもともと持っている動物が何であるのかは不明だからだ。

 それではなぜ、サル痘は「猿」という名前を持つのか。その理由は、1958年に最初に感染が見つかったのが、カニクイザルという猿の仲間だったことによる。

 しかも、その猿も自然界で見つかったものではない。デンマーク・コペンハーゲンの研究所で飼育されていた猿で、さらに最近流行地として問題になっているアフリカではなく、シンガポールから輸入されたものだった。

 歴史上、サルから人に感染した事例も1、2例程度しか報告されていない。サル痘の“猿”は名ばかりだと言っても間違いではない。

 サル痘がどこに存在したウイルスで、今現在、どこが増殖の中心であるのかは依然として不明のままだ。