2002年に起きた脱北者による中国・瀋陽の日本領事館における駆け込み事件。この一件で、中国の公安に連行された脱北者が解放され、韓国に亡命することができたのは、共同通信記者による動画撮影の一部始終と、領事館における公安の不法行為を抗議し、脱北者の身柄解放を要求したためだ。ところが、反日に染まった韓国メディアは、捏造に近い字幕で韓国人の憎悪をかき立てた──。韓国における反日論説の現状を、韓国の保守系コラムニスト、ファンドビルダー氏が語る後編。
(ファンドビルダー:韓国コラムニスト)
◎前編「尹錫悦政権も期待薄?韓国メディアで反日ヘイトが生み出される残念なプロセス」から読む
その後、領事館の正門での緊迫した状況を目の前で見守ったという、聯合ニュースのイ・チュンウォン記者の話が続いた。
「当時の状況を説明して欲しい」という司会者に対する聯合ニュース記者の返答には、次のような部分があった。「冷静かつ冷淡な日本領事館職員」という字幕が一緒に登場した。
「当時現場で、日本の外交官の姿を見守って怒りが湧いた。その連中、その連中の表情が、『面倒だから早く処理して欲しい』という表情だった。日本の職員が何か言葉を言ったら、中国の公安が領事館の中に入って行ったよ」
聯合ニュース記者は日本領事館職員の表情を見て、「面倒だから早く処理してくれという表情だった」と断定したが、いやはや、このような断定は恣意的な判断に基づくものではないのだろうか。
「面倒だから早く処理してくれという表情」とは、具体的にどのような表情なのか。「面倒だから早く処理してくれという表情」が存在するのなら、反対に「面倒ではないから、ゆっくり処理してくれという表情」も存在するのではないか。そんな反対の場合は、具体的にどのような表情なのか──。
客観的な事実をきちんと判断しなければならない記者までもが、相手が日本となると、恣意的に断定してしまうのが今日の韓国の実体なのだ。
聯合ニュース記者は、激昂した言葉遣いで日本領事館の職員を指し、「その連中」という表現を繰り返し使って露骨に反日感情を表した。
動画には、日本領事館職員が取っ組み合いをしている中国の公安に向かって、何か言うような場面が現れるが、正確に何を言ったのか確認はできない。常識的に見て、領事館職員は「領事館内は日本領土に相当するので、このような強圧で物理的な力の行使は日本の主権を侵害する」という立場を中国の公安に伝えていると考えるのが妥当であろう。
にもかかわらず、放送は「日本側が中国側に脱北者連行を要請」という、信頼に値しない中国政府による一方的な主張を反映した字幕を掲げた。
聯合ニュース記者の説明とともに字幕は次々と現れ、「面倒だから早く処理して欲しい!」「日本の外交官の言葉で中国公安が領事館内へ!」「何か合意したような怪しい状況」「領事館内は日本領土、自由に入った中国公安」「日本領事館職員と中国公安がお互いに対話までする?」などという表現に繋がった。
もしこの放送を真実を知らない人が見ていたら、このように歪曲された字幕のメッセージによって、日本領事館側が脱北者を疎ましく思って、中国の公安にお願いして引っ張り出させたという結論に達するほかはない。