2002年に起きた脱北者による中国・瀋陽の日本領事館における駆け込み事件。この一件で、中国の公安に連行された脱北者が解放され、韓国に亡命することができたのは、共同通信記者による動画撮影の一部始終と、領事館における公安の不法行為を抗議し、脱北者の身柄解放を要求したためだ。ところが、反日に染まった韓国メディアは、捏造に近い字幕で韓国人の憎悪をかき立てた──。韓国における反日論説の現状を、韓国の保守系コラムニスト、ファンドビルダー氏が語る。
(ファンドビルダー:韓国コラムニスト)
2002年5月8日、脱北して中国に身を隠していた北朝鮮住民5人が、中国・瀋陽の日本領事館に駆け込んだ。実は既に1年前、彼らの家族と親戚7人が、中国・北京のUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)に保護され、韓国への亡命に成功していた。その後、北京のUNHCRに対する中国の公安の警備が強化されたため、5人は代案として正門が開いている日本領事館を選んだのだった。
日本領事館に突入した5人中、男性2人は無事進入に成功したが、女性2人と3歳の子供は、領事館の正門で中国の公安に捕まった。女性2人は正門の手すりをぎゅっとつかんで、地面に引きずられながら、外へ引っ張り出そうとする公安の腕力に立ち向かって、身悶えしながら踏ん張った。
この緊迫した場面は、向かい側の建物の5階で待機していた、共同通信の日本人記者によって動画で撮影された。
取っ組み合いの末、公安は日本領事館に無断で侵入して、脱北者5人を連行した。この事件に対して、日本政府は中国の公安による不法行為(不可侵権侵害)について、武大偉(ぶ・だいい)駐日中国大使を外務省に招致し厳重に抗議した。そして、連行された5人の身柄を、直ちに釈放することを中国側に要求した。
日本領事館の正門で起きた脱北者と中国の公安との取っ組み合いが鮮明に収められた動画は、全世界に配信された。おかげで、人道主義的な措置を求める国際世論があっという間に形成され、大きな圧迫を受けた中国政府は連行した5人の脱北者を15日後、「第三国追放」という形で釈放した。釈放された5人はフィリピンを経て、韓国に入国した。
通常、このような事件(公館への駆け込み亡命)が発生すれば、外交問題に飛び火しやすい。ゆえに、世界中のすべての国は、このような事件がなるべく自分たちサイドで起きないように願うのが歴然たる現実である。これは、直接的な当事者の韓国でさえ例外ではない。
5人の脱北者が瀋陽の日本領事館に駆け込んだのは、2002年のことだったが、当時、北京の韓国領事館でも同じような事件が発生していた。