ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が2月24日に開始したロシア・ウクライナ戦争(露宇戦争)は既に50日が経過しようとしている。
過去10年間、ロシア軍の近代化と戦力向上について多くのことが語られてきたため、戦争開始以前は、「ロシアは世界最大かつ最強クラスの軍隊を保有している」と広く信じられていた。
軍事力は米国には及ばないが、ウクライナのような軍事的弱小国を征服する能力はあると思われていた。
プーチンは、2日間で首都キーウを占領し、ウォロディミル・ゼレンスキー政権を打倒し、ロシアの傀儡政権を樹立し、ロシアがコントロールするウクライナの建設を夢想した模様だが、その試みは見事に失敗した。
7週間にわたるウクライナでの戦争で、ロシア軍は首都キーウを占領できず、大きな損害を出して撤退せざるを得ない状況になった。
ロシア連邦軍の評判は地に落ちている。そして今、ロシア軍はウクライナの他の地域でも劇的な成功は望み薄で手詰まり状態になりつつある。
プーチンが始めた露宇戦争は、プーチンの意図とは逆に、米国などの民主主義陣営の結束を強化する結果となり、ロシアの国際社会における孤立を決定的なものにした。
さらに、民主主義諸国のロシアに対する厳しい経済制裁は、ロシア経済に甚大な被害を与え、ロシアの国力は徐々に減衰する可能性が高い。
2014年のロシアのクリミア半島併合に対する経済制裁ですらロシアの製造業、特に軍事産業に大きな影響を与え、西側諸国の部品を必要とする武器の製造を困難にした。
例えば、ロシアの最新戦車「アルマータ(T-14)」は、西側諸国の部品が入手できずに量産(当初の計画では2020年までに2300両の製造を予定していた)を断念した。
世界の軍事専門家が「なぜアルマータが戦場に登場しないのか」という疑問に対する答えがここにある。
2022年の経済制裁は、2014年のそれに比較にならないくらいに厳しい。
西側から半導体やベアリングが入手できず、最新鋭の軍事装備品が製造できないロシアはもはや軍事大国とは言えない状況になるであろう。
考えてみれば、今回のプーチンの歴史的な誤判断のために、世界的なパワーバランスが民主主義陣営にとって有利な状況になる可能性が出てきた。喜ばしいことである。