ドゥプイ研究所はツイートでBTGの問題点を列挙しているが、主要な指摘は以下の通りだ。
・ ロシア軍が現在BTGを重視しているのは、利用可能な人員が不足しているためである。BTGはチェチェン紛争の際に便宜的に使用され、2013年にロシア国防省のマンパワーが少ないことへの対策として全面的に採用されたものである。
・ロシア軍のBTGとドクトリンは、マンパワーを犠牲にして、火力と機動力を重視して構築されている。
・ 西側のアナリストは、ロシアのBTGはリアルタイム(またはほぼリアルタイム)で長距離砲撃をネットワーク化することができると考えていた。例えば2014年のゼレノピリア攻撃*1のように。
(なお、ゼレノピリア攻撃とは、2014年7月11日の早朝、ロシア領土内からロシア軍によって発射されたロケット弾幕が野営していた37人のウクライナの兵士と国境警備隊員を殺害した攻撃のことだ)
・BTGは、実際にはこれが機能しないことが判明した。安全な手段で通信することさえできないし、ましてや遠距離で素早く効果的に狙いを定めて攻撃することはできない。このため、BTGの戦闘力の優位性はほとんど失われている。
・ロシアのBTGは有能な諸兵科連合戦術を実行できないように見える。第1次世界大戦以来、諸兵科連合は近代的な火力・機動戦術の基本中の基本であったから、BTGは基本的に失敗の組織である。
・これは、効果的な歩兵支援の欠如に大きく表れている。BTGの歩兵は、ウクライナの機械化・軽歩兵の対戦車キラーチームが、ロシア軍の装甲戦闘車(AFV)、歩兵戦闘車(IFV)、自走砲を攻撃するのを防ぐことができない。装甲部隊の防護は歩兵の主要な仕事である。
・これは歩兵部隊が有効でないためか、BTGの歩兵の数が足りないためかは不明であるが、おそらく両方であろう。
・実際、BTGは、妥当な戦闘損耗で、防御された市街地を攻撃し占領するのに必要な歩兵部隊の質と量を欠いている。
・BTGの人員構成がスリム(約1000人以下)であるため、多くの消耗を被ると戦闘力と効率性が著しく低下する。
・BTGのパフォーマンスが、ロシア軍の人員と訓練に内在する欠陥によるものか、それとも教義上のアプローチの欠陥によるものかを判断するには、徹底的な分析が必要である。しかし、ここでもまた両者に原因があると思われる。
・いずれにせよ、これらの問題は短期的には改善されそうにない。この問題を解決するためには大規模な改革が必要である。
以上のようなドゥプイ研究所の主張は妥当だと思う。ロシア軍が露宇戦争に勝てない要因が根本的なものであるならば、今後のロシア軍の苦戦は明らかであろう。
*1=2014年7月11日の早朝、ロシア領土内からロシア軍によって発射されたロケット弾幕は、野外でキャンプしていた37人のウクライナの兵士と国境警備隊を殺害した。