ロシア軍を過大評価しウクライナ軍を過小評価してしまった

 プーチンは、ロシア軍を過大評価し、ウクライナ軍を過小評価してしまった。

 その結果、戦争を始める前に行う情報見積(敵の能力や敵の可能行動に関する見積)や作戦見積(我に関する見積で、行動方針やその結論を含む)が極めて不適切なものとなり、その見積に基づいて作成される作戦計画が問題だらけになってしまった。

 例えば、2日間で首都キーウを占領し、ゼレンスキー政権を排除し、傀儡政権を樹立し、ウクライナ全体を数週間で占領するなどの計画は非現実的なものになってしまった。

 今回の初期の作戦では大きく分けて北、東、南方向からの攻撃を19万人の兵力で約19万人のウクライナ軍に対して実施してしまった。

 通常、攻撃側は防衛側の5倍の戦力で攻撃しなければ成功しないのが原則だ。

 この原則に従うと95万人の兵力が必要であるので、そもそもロシア軍の攻撃は失敗するのが必然だったのだ。

 甘い見積や計画のために、食料・飲料水、弾薬、燃料などの兵站が機能しなくて大問題を引き起こしてしまった。

「素人は戦略を語り、プロは兵站を語る」という格言があるが、兵站なくして戦争の勝利はあり得ない。

 この兵站の問題は深刻な問題で4月12日の時点でも解決していないし、今後とも大幅に改善することはないであろう。

 その他の敗北の原因は、ウクライナ軍・ゼレンスキー政権・ウクライナ国民の頑強な抵抗や西側諸国の経済制裁に対する過小評価、情報戦の失敗、航空優勢獲得のための航空攻撃・ミサイル攻撃が不完全、ロシア軍の練度・士気の低さ、厳寒期の寒さ対策の欠如による凍傷の多発などが列挙できよう。