1 ロシアが敗北したわけ:ロシア側の要因

 露宇戦争の初期作戦において、ウクライナ軍がロシア軍に勝利したことは明白である。

 ウクライナ軍は、特にロシア軍の主攻撃であった首都キーウ正面において、ロシア軍に大打撃を与え、ロシア軍を撤退せざるを得ない状況にした。

 この項では、ウクライナが強大な大国と思われたロシアとの緒戦において勝利したのはなぜかについて、ロシア側の原因に着目して記述する。

独裁者プーチンの戦争

 露宇戦争は、「プーチンのプーチンによるプーチンのための戦争」であると私は思っている。

 つまり、今回の戦争に対してはその結果も含めてプーチンにすべての責任がある。

 独裁者プーチンが自ら戦争の実施などの重要事項を決定した。プーチンの決定は、プーチンとプーチン以外の断絶を明らかにした。

 戦争をやる気満々のプーチンと戦争に乗り気でないプーチンの側近たち、特に国防相セルゲイ・ショイグやロシア連邦軍参謀総長ワレリー・ゲラシモフの間には断絶がある。

 プーチンを今まで支えてきたシロビキ(治安・国防関係者)、オリガルヒ(新興財閥)、ロシア軍がプーチンについていけない状況になっている。

 20年以上にわたりロシアのトップに君臨したプーチンは裸の王様になっている。

 裸の王様には正しい情報が流れない。プーチンが喜ぶ情報しか彼に届かないで、彼にとって不都合な情報は届かない状況になっていると言われている。

 この状況がロシア軍を過大評価し、ウクライナ軍を過小評価するという致命的な結果を招いてしまった。