2019年11月、ブラジリアで開かれたBRICS首脳会議での習近平主席とプーチン大統領(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 ロシアで国営テレビの編集者オフシャンニコワさんが、3月14日夜のメインニュースの生放送中に、「戦争反対」のポスターを掲げて画面に闖入したことが、世界の称賛を浴びている。

 そんな中、中国でも「中国のオフシャンニコワ」が現れた。3月13日、胡偉(こ・い)上海交通大学特任教授が、「ロシアとウクライナの戦争の起こりうる結末と中国の選択」と題した論文を、インターネット上にアップしたのだ。この論文は直ちに削除されたが、中国内外で瞬く間に拡散し、支持の輪が広がっている。

 胡偉教授は、1964年生まれで、82年に上海の名門・復旦大学国際政治学部卒業。89年に同校で修士号を取り、復旦大学教授や政治行政研究所副所長などを務めた。97年夏からは一年間、米ハーバード大学に訪問学者として籍を置いた。帰国して2000年から、上海交通大学に移籍している。これまでに代表作の『科学的な建党の自由王国に向かって』(2011年、上海人民出版社)を始め、国際政治の書籍を多数出しており、中国の国際政治学の世界では、つとに知られた人物だ。

 そんな胡偉教授が、ウクライナ戦争に関して、習近平政権の方針に、真っ向から対立するような「勇気ある論文」を出したのだ。私はその全文を入手したので、以下に全訳する。

9・11よりも大きな影響

<ロシアとウクライナの戦争は、第二次世界大戦以降で最も深刻な地政学的紛争だ。(2001年の)9・11事件よりも世界的に大きな影響を及ぼすだろう。

 中国はいまのところ、この戦争の行方とその国際的局面の影響を正確に調査・判断し、臨機応変に、中華民族の長期的な利益に合致するよう戦略的な選択を行い、比較的良好な外部環境を目指して努力する必要がある。

 ロシアによるウクライナへの「特別な軍事行動」は、(中国)国内で極めて大きな論争を巻き起こしている。ロシアの支持者と反対者は分かれている。本論はそのどちらをも代表するものではない。一学者が個人の名義で、客観的に戦争がもたらす後遺症を分析し、それをもとに対策を提示したものだ。中国の最高意思決定レベルの判断と参照のための対策を提案したいと思う。