三.中国の戦略的選択

1.中国は、プーチンの呪縛のもとにいるわけにはいかない。なるべく早期に袂を分かつ必要がある。ロシアと西側との衝突がエスカレートしていくことは、アメリカの中国に対する注意力が他へ移っていく助けとなる。その意味では、中国は事の成り行きを楽観視していればよいと思うかもしれない。ひいてはプーチンを支持していけばよいと。だがその前提は、ロシア(プーチン政権)が崩壊しないということだ。

 もしもプーチンが失脚したらどうなるか。中国はプーチンと一蓮托生だったため、必然的に累が及ぶことになる。プーチンは中国の支持がなければ勝機を探れないが、それでもいまや(ロシアの)前景はひどく暗澹としている。かつ中国も、ロシアをしっかり支えていくパワーを持ち合わせていない。

 国際政治の基本法則は、「永遠の友はなく、永遠の敵もない。あるのは永遠の利益だけ」というものだ。目下の国際情勢にあたり、中国はただ自身の最大利益を維持、保護することから始めて、なるべく害が軽くなる方を取り、できるだけ早期にロシアという重荷を下ろすしかない。

 いまの状況を見るに、もう一つ言いたいのは、窓が開いている二週間の間に(政策転換を)行えということだ。それ以上遅れたら、中国は旋回していく余地を喪失してしまうだろう。即断即決が必要なのだ。

2.二兎を追うのを避け、中立保持の立場を放棄し、世界の主流の立場を選択すべきだ。現在、中国の国際上の態度、選択は、形式的には中立路線を進もうとし、両者ともに罪をかぶせないというものだ。それは国連安保理と総会でどちらも棄権票を投じ、ロシアを支持しながらもウクライナを慰撫するということも含めてだ。

 だが、そのような対場では実際、ロシアの要求を満たせないし、ウクライナとその支持者、同情者たちの怒りも買う。つまり(中国が)世界の多数の国々と対立する地点に立ったことになるのだ。

 ある状況下においては、表面的に中立であることは、一種の賢い選択だ。だが今回の戦争には適合しない。中国は今回、漁夫の利を得ることはできないのだ。

 中国が一貫して、国家の主権と領土の完備を尊重すると主張していることを鑑みると、世界の大多数の国が一辺に立つしかない時に、さらなる孤立化を招かざるを得ない。そして中国が立場を改めることは、台湾問題の解決にも有利となる。

3.できるだけ早期に戦略的な突破を図り、西側からのさらなる孤立を避けるのだ。プーチンとの決別と中立的立場の放棄を通して、中国の国際的イメージの樹立に貢献するのだ。またこの機会を借り、いろんな努力を通じて、アメリカ及び西側との関係を緩和していくのだ。

 たとえそれが難しいにせよ、大きな知恵を絞れば、未来にはそれが最良の選択だ。現時点で見れば、ウクライナ戦争が引き起こしたヨーロッパ地政学の政治闘争は、アメリカがヨーロッパからインド太平洋地域に戦略的に移行していく時期を、大幅に遅らせた。だがそのことを、過度に楽観視してはならないのだ。

 アメリカ国内では、すでにこんな呼び声が起こっている。すなわち、ヨーロッパはとても重要だが、中国はさらに重要だ。アメリカの最重要目標は、中国がインド太平洋地域の主導的なパワーとなるのを阻止することだ。

 そのような状況下で、ロシアとウクライナの戦争を、いかに利用し、戦略的調整を図っていくか。そしてすべてはアメリカの対中敵視政策を変えさせること。並びに孤立した局面からどう抜け出していくか。これらが、中国が直面している一等大事なことだ。レッドラインは、アメリカと西側が連帯して対中制裁をかけるのを防止することだ。

4.(中国が)世界大戦と核戦争の勃発を制止し、世界平和に余人をもって代えがたい貢献を行うことだ。プーチンはすでに明確に、ロシアの戦略的威嚇パワーは特殊な戦備状態に入ったと要求している。そのため、ロシアとウクライナの戦争はおそらく、コントロール不能の状態に向かっていくだろう。(ロシアは)多くの救いの道を得ても、道を失して救いを減らしている。もしもロシアが世界大戦、ひいては核戦争をおっ始めてしまったら、世界は取り返しのつかないことになる。

 そのような危機に直面して、同時に中国が責任ある大国としての積極的な役割を体現するために、われわれはプーチンの側に立てないばかりでなく、明確な行動を取り、プーチンが行うかもしれない冒険を全力で阻止すべきなのだ。中国は世界で唯一、そうしたことができる国家なのだ。

 中国独特の有利な点をぜひとも発揮すべきだ。中国の支持を失えば、プーチンは大方、戦争を収めていくしかなくなるだろう。少なくとも戦争をエスカレートさせようとはしなくなる。

 それによって、中国は必ずや、国際的にあまねく賞賛を得る。さらなる孤立した局面から脱却する手助けになるだけでなく、世界平和を維持し、保護するための第一級の立役者ともなる。そしてアメリカや西側との関係改善を模索する契機にもなるというものだ>