金の延べ棒でがんが治ると信じた友人

──がん治療は、今後ますます放射線治療が増えていくとお考えでしょうか。

金田:私自身は放射線治療を選択しましたが、放射線治療の「信奉者」ではありません。がんには他の治療方法もあるし、将来的には免疫療法や分子標的治療なども広がっていくでしょう。がん治療はもっと大きく変わっていくと思います。

──書籍には、金田さんの親しいご友人で、民間企業から女性能楽師になられたことでも有名な宮内美樹さんが、金田さんと同じタイミングで大腸がんを患った話も登場します。宮内さんが病院での治療から離れ、「金の延べ棒療法」という民間療法に頼っていたという話とともに。こういった民間療法に頼る患者もいるんですね。

金田:民間療法のすべてを否定するつもりはありません。例えば、病院での抗がん剤治療や放射線治療と併せて自然食品を食べ、食事から体を整えて病気を治していきましょう、といった方法は、法外に高額でなければ悪いことではないでしょう。

 しかし、民間療法の中には非常に悪質なものもあります。その商品はたいてい高額ですが、経済的に余裕があるなら試すことは個人の自由です。しかし、それだけでがんが完治すると信じ込むことはどうか。また、商品を売る側が、がんが完治するかのように宣伝することは、極めて悪質な行為だと思います。

「金の延べ棒療法」は芸能人の中にも頼っていた人が多く、有名な民間療法の一つです。金の延べ棒は非常に高額なものですが、資産だと割り切って買うならいいのかもしれません。ただ、「金の延べ棒を体にかざしたらがんが治る」ということについて、私は納得できる説明を今まで聞いたことはないし、少なくとも、その方法だけでがんを治そうとすることには賛成できません。

──効果の不確かな治療で「がんが完治する」と謳い、がんが刻々と進行している人からお金を取ることは危険な行為だと思います。このような治療法を取り締まったり、その効果を審査したりする構造にはなっていないのでしょうか。

金田:巧妙なんですよね。医療機関での治療と民間療法を併用して治癒したという事例がHPに載っていることもありますが、どの治療法で治ったのかは証明することが難しい。

 私は宮内さんから、「金の延べ棒をかざすだけでがんが治る、と言われた」と聞いていました。しかし、ホームページにはそこまではっきりと「治ります」とは明示されていないし、もし「治ると言ったのか」と問い質したとしても、「こちらはそんな言い方はしていない」と反論されるだけでしょうね。