放射線治療で最も重要なものは何か?

──金田さんはがん治療に関する調査を重ねて、米Varian社の高精度放射線治療装置にたどり着きます。なぜ金田さんはVarian社の装置を使いたいとお考えになったのでしょうか。

金田:放射線治療にしようと考えていた時、「放射線治療は機械が重要で、米国の最新鋭の機械でないと、なかなか上手くいかないらしい」という話を聞きました。それがVarian社の製造した高精度放射線治療装置でした。

 がんセンターもその装置を持っていたので、自分から「とにかく放射線でやります。家族で話し合って決めました。」と言って、強引に放射線治療にしてもらいました。

 Varian社の高精度放射線治療装置の治療は、一言で言うと、すごく安定していました。私は喉の近くと胸、胃の近くの3箇所にがんがあったので、かなり広い範囲に放射線を当てる必要がありましたが、技師の人たちが試行錯誤している感じが全くなかったので不安はなかったですね。がんセンターの放射線技師3人が1カ月間、継続して担当してくれました。

──本書の巻末で、金田さんが最初に治療を受けたものの、結局その治療の進め方に違和感を覚えて転院することになった瀬戸泰之先生(東大病院病院長)にインタビューされていることに驚きました。その中で金田さんは、ご自分が治療の過程で感じたシステムの問題に関しても触れています。

金田:瀬戸先生が最初に外科手術の詳細や回復の過程、放射線治療といった選択肢について、説明してくれなかったことが転院することになったきっかけです。そのため、その経緯をいつか先生に話さなければいけないと思っていました。そして、瀬戸先生の見解も聞いておきたかったんです。

 瀬戸先生は自分のやり方にすごく自信を持っています。とにかくがんだけ、病気だけを見て最適だと思う治療方針を提示する。瀬戸先生の場合は、それが外科手術によって切除をする方法です。

 瀬戸先生は、「金田さんのように『自分で考えて選択したい』という人は少数です。多くの人は『先生にお任せします、少しでも早く手術して下さい』と言う。こちらが選択肢を提示しても、どれを選んでいいのか分からなくて、家族の意見も割れてしまう。だから、この治療方法で行きましょうと推し進めた方が患者さんのためにもいいと考えている」と話していました。私自身はそうした進め方は嫌ですが、一つの考え方として、そういうものもありなのかとは思います。

 ただ、価値観が多様化している若い世代にも通用するのか、大きな疑問を持っています。多くの方に医療について考えるきっかけとしてもらいたいので、私の体験や思いなどを語り続けていきたいと思います。(構成:添田愛沙)

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