(朝比奈 一郎:青山社中筆頭代表・CEO)
菅政権が強い逆風にさらされています。目下、その逆風の最大の出どころはおよそ1カ月後に開催されるオリンピックです。
世論調査によっては、「中止」や「延期」を求める声がそれぞれ40%超、要するに8割以上の国民が「コロナ下にあるいま、オリンピックはやらない方がいい」と考えているとの結果が、緊急事態宣言下の先月は出ていました。最新の調査(6月中旬実施)だと、調査によっては、それぞれ30%超ずつになっていて、合計6割以上の国民が「いまオリンピックはやらない方がいい」ということで、少し開催機運が増しているとも言えますが、最近になって、東京の感染者数は増加傾向にあり、また、この数字、すなわちやらない方が良いと考える人は容易に増えるとも考えられます。
そのような状況ではありますが、菅政権も東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会も中止や延期を要請するどころか、「有観客での開催」に突き進んでいるように見えます。
党首討論で見せた「五輪への思い」も国民に全く伝わらず
なぜ菅総理は国民がこれほど反対している中でもオリンピック開催に突き進むのでしょうか。結論から書けば、その方針の当為は別として、何より、どうも「本音」や国民への「寄り添い」が見えない感じが否めません。いつも、「安心安全を守る」などの型どおりのコメントしか聞こえてこないのです。
そんな中、珍しく、その「本音」の一端がうかがえそうな機会がありました。6月9日に国会で開かれた党首討論です。立憲民主党の枝野幸男代表とのやり取りの中で、1964年、高校生時代にテレビを通して見た東京オリンピックで、バレーボール女子「東洋の魔女」たちの回転レシーブや、柔道オランダ代表のヘーシング選手の活躍に胸を熱くしたということでした。自らの過去の経験を踏まえ、今の子供たちにもその感動を味わってもらいたいということです。本当ならこういう個人的なエピソードが紹介されると「総理の人間的な側面が見られた」と好意的に受け止められることが多いのですが、残念ながら、この時も主には「今さら思い出話を聞かされても・・・」という受け止め方をされていたように感じます。要するに、このエピソードが菅総理の「本音」だとは認識されず、国民目線に合わせて寄り添っているとは全く国民に認識されていなかったのです。