国民からの共感を得にくい姿勢

 理由はふたつ考えられます。ひとつは、「本音があまり見えてこないこと」。もうひとつが、「相手に寄り添う感じがないこと」です。実はこの「本音」と「寄り添い」のふたつは、相手に自分のことをしっかりと伝える時の大事なポイントだと言えます。

 この点で菅総理はどうなのでしょうか。オリンピック開催は揺らがないようですが、だからといって、「安心・安全を確保したうえでオリンピックを存分に楽しみたい」という人に寄り添っている感じもありませんし、逆に「コロナが落ち着いていない状況で外国から大勢の選手や関係者を招いて大会を開くのは不安だ」という人に寄り添っている感じはさらにない。あるいは、「コロナの影響で経済的に困窮している」という人に寄り添っている感じもない。じゃあ、本当の本音はどこにあるのかというと、「オリンピック開催を推進したい」というのはさすがに分かりますが、その最大の理由(本音の本音)は実は見えにくい。実態はともかく、本音も見えなければ、国民のどの層にも寄り添っている感じが全く出ていないのです。実はこれは菅総理の大きな特徴になってしまっています。

 携帯料金を下げたり、デジタル化を推し進めたり、ワクチン接種を猛スピードで進めたり「やるべきことはやっている」のですから、本当ならもうちょっと支持率が上向いてもよさそうなのですが、「本音」の部分と「寄り添う」部分が弱いので、国民の共感を得られないのです。私はこれを「デジタル化の罠」という言葉で表現しています。つまりは、菅総理は、究極の「デジタル宰相」だと思えるのです。もちろん、ここで言いたいのは、菅総理がITに強いとか弱いということではありません。以下、私が菅総理を「デジタル宰相」と考える理由を見て行きたいと思います。

「デジタル宰相」菅義偉総理(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

スピード、簡潔さ、要点「だけ」を重視

 そもそも「デジタル」とは何でしょうか。

 辞書的な定義でいえば、デジタルとは〈連続的な量を、段階的に区切って数字で表すこと〉。これに対してアナログは〈数値を、長さ・回転角・電流などの連続的に変化する物理量で示すこと〉です(小学館『デジタル大辞泉』より)。少し乱暴に整理すれば、「デジタル=離散的(段階的)、アナログ=連続的」と言えます。

 これを踏まえて考えてみると、連続的ではなく離散的に示せるというデジタルの本質は「SKY」という言葉で表せるのではないかと思っています。Sは「素早さ」「スピード」、Kは「簡潔さ」、Yは「要点」です。つまりデジタルの本質とは、素早く、簡潔で、そして要点のみ、ということです。合理的・効率的である、と言えるでしょう。