『3年B組金八先生』(小山内美江子原作)は1979年放映開始。第1シリーズでは、まだ「普通」の子のイメージが明確ではなく、ややおぼろげ。第2シリーズ(1980年)になると、校内暴力を描くことで逆説的に「普通」(問題を起こさない生徒)が形を現し始めている。

 同じく1980年に『3年奇面組』(新沢基栄作)の連載が始まる。この漫画は明確に没個性を描いていた。目立つまいとする「普通」の子と、「普通」を諦め、個性的な顔立ちで突き抜けた存在の奇面組の学園コメディ、という内容。

共通一次がもたらした序列化

 この頃、何が起きていたのか。1979年、共通一次試験がスタート。それまでは各大学が準備する試験を受験するだけの方式だったのが、受験生は共通一次試験を受験してから、各大学が用意する二次試験を受けるという方式に変わった。

 この共通一次試験の導入は生徒の「普通」化に大きな影響を与えた、というのが私の仮説だ。

 河合塾の名物講師・牧野剛氏(故人)が、私が受講した講義の中で次のように話してくれた。共通一次試験制度がスタートする際、牧野氏ら予備校の講師たちは次のように警告したのだという。「そんなこと始めたら、我々受験産業はすべての大学を偏差値で序列化しますよ。それでもいいのですか」。そして実際に、共通一次試験導入とともに、大学は偏差値でランク付けされた。

 東大を最難関として、大学を偏差値でランク付けし、序列化することが受験では常識となった。やがてこのランク付けは高校受験にも波及する。この高校に入学するにはこれくらいの偏差値、というように高校も序列化された。