(写真:ロイター/アフロ)

「TikTok」(抖音)や「Headline」(今日頭条)などで知られ、今年の「中国人学生が就職したい企業ランキング」でトップに立つのが、北京に本社を置くバイトダンス(ByteDance=北京字節跳動科技)だ。その創業者である張一鳴(Zhang Yiming)CEOは、まだ30代後半の若さながら、4月に発表された「2021年フォーブス世界長者番付」で、世界39位にランキングされた。推定総資産は、365億ドル(約4兆円)!

 そんな中国の若者たちが最も憧れるチャイニーズ・ドリームの体現者、張一鳴CEOが、5月20日、突然の辞意を発表した。10万人にまで膨れ上がった全社員に宛てて、メッセージを送ったのだ。その全文の翻訳は末尾に添付するが、年末でCEOを辞して会社を去ること、新たなCEOは共同創業者の梁汝波(Liang Rubo)に譲ることなどが、連綿と書かれている。

 バイトダンスに一体何が起こったのか? そのことを述べる前に、これまでの張一鳴CEOとバイトダンスの足跡を、簡単に振り返ってみたい。

不動産検索アプリが大ヒット

 張一鳴は1983年に、福建省龍岩市に生まれた。父親は同市の科学委員会の公務員で、母親は看護師である。この世代の多くの中国人がそうであるように、一人っ子として自由闊達に育ち、科学者に憧れた少年だった。