(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)
文在寅韓国大統領は、19日から23日まで3泊5日の日程で訪米し、21日にはバイデン大統領と首脳会談を行った。バイデン大統領が就任後、他国の首脳の訪問を受けるのは、日本の菅義偉首相に次いで、文大統領が2人目となる。
「皮肉」から始まった首脳会談
米韓両首脳は、会談に先立って朝鮮戦争の英雄に名誉勲章を授与した。名誉勲章は米国大統領が授与する勲章の中で最高位のもので、バイデン大統領が就任して初めて名誉勲章を授与する相手が、今回の朝鮮戦争の勇士ラルフ・パケット・ジュニア予備役米陸軍大佐である。彼は、朝鮮戦争で中共軍による迫撃砲と機関銃の奇襲攻撃に勇猛に立ち向かった人物である。
米国の名誉勲章の授与式に、海外の首脳が出席するのは今回が初めてのことだという。だが、それは文在寅大統領を厚くもてなしたということを意味していない可能性が高い。
授与式に参加した文在寅氏は、中国の習近平国家主席との電話会談において中国共産党創立100周年に祝意を表し、その業績を称賛した人でもある。あくまでも中国に対する従属的な姿勢を改めようとしない文在寅大統領の前で、中共軍と戦った英雄に名誉勲章を授与するのはバイデン大統領流の痛烈な皮肉と見るべきだろう。果して文在寅大統領は、どのような気持ちで授与式に参加したのであろうか。