2019年10月、韓国の「国軍の日」に大邱の空軍基地で開催された式典に参加した際の文在寅大統領(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)

 米国のジョー・バイデン大統領が、対面形式での最初の首脳会談の相手として日本の菅義偉総理を選び、さらに2番目の相手を韓国の文在寅大統領としたのは、東アジアで中国や北朝鮮と向き合い、米国の立場を強化するためには日米韓の3カ国協力体制を改めて確立・強化することが必要との認識が背景にあるからだ。

 日本は台湾問題を含め米国との協力を確認しており、日米関係は盤石である。

 ただ米国にとっての問題は、北朝鮮の核問題や人権問題で北朝鮮を庇い続け、中国の国際法違反の行為に対しても毅然とした立場を取れない韓国の文在寅政権である。21日に開かれる米韓首脳会談においても、文在寅大統領のこうした姿勢が改まらなければ、米国としても韓国との関係を再考せざるを得ない可能性がある。

 また、日韓関係も冷えたままである。

 韓国が日米韓協力のための重要な政策的立場でどこまで歩み寄れるのか、米国はどこまで韓国の独自路線を許容できるのか、日韓関係は日米韓協力の次元で改善の道が始まるのか、こうした点について予測してみたい。

相次ぐ日米間の協議は関係修復の糸口となるのか

 米国は日韓の対立によって停滞している日米韓協力の復元を模索している。バイデン大統領が21日に文在寅大統領と会談を行うことがその何よりの証拠である。そこで韓国を日米韓側に引き寄せるための準備を着々と行っている。

 4月には、2日に大統領府や内閣府の安保室長会議、29日に合同参謀本部議長会議が開催された。今月に入ってからは5日に外相会談、12日には情報機関トップによる非公式接触と続いており、6月4~5日にはアジア安全保障会議(シャングリア対話)で国防相会談が行われる可能性が高い。