5月0日、大統領就任4年の特別演説をした後、記者の質問に笑顔で答える文在寅大統領(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

 文在寅(ムン・ジェイン)政権の「検察皇太子」と呼ばれている李盛潤(イ・ソンユン)ソウル中央地検長が、なんとソウル中央地検によって権力乱用の容疑で起訴された。李地検長は、尹錫悦(ユン・ソギョル)検察総長の辞任以降、「最も有力な次期検察総長候補」とされてきたが、違法な捜査に関与した疑いで韓国の検察史上初めて「被疑者地検長」という不名誉に甘んじることになった。

朴槿恵政権時の疑惑追及に執念

 李地検長の起訴は、いわゆる「金学義(キム・ハクウィ)事件」に対する再捜査が端緒となっている。

 朴槿恵(パク・クネ)政権初期の2013年3月に法務部次官に任命された検察出身の金学義氏は、検察庁勤務時代に建築業者の尹ジュンチョン氏の別荘で数回にわたって性的接待を受けたという疑惑が暴露され、任命から6日後に辞任に追い込まれた。

 事件を暴露した女性実業家A氏の主張によると、尹氏は自分の別荘を使って30人あまりの女性を動員して前現職高官を接待してきたが、その中に金氏が含まれていたという。A氏は「別荘に呼ばれた女性たちはモデルを志望する若い女性で、尹氏から脅迫や強要を受け、強制的に催淫剤を飲まされ、性的暴行を受けた」と主張した。また、下着姿の金氏が女性を抱いて歌を歌っている別荘での酒席の動画も公開された。

 しかし、強制性的暴行の疑いで検察に告発された金氏だったが、その後、検察は「容疑なし」の結論を下した。さらに2014年にも別の被害女性が現れたため、検察が金氏の再捜査に乗り出したが、ここでもやはり「容疑なし」の結論となった。当時、韓国メディアは、「政権の機嫌を伺う検察の拙速捜査だ」と検察に対して強い批判を浴びせていた。

 この事件に関しては、2017年に文在寅政府が発足すると、三度目となる捜査が行われることになった。というのも、朴槿恵政権の「弊害清算」を至上課題に掲げた文在寅大統領が、政府各機関に「弊害清算TF」を設け、法務部内にも「検察過去史委員会」という弊害清算TFを設けたからだ。この検察過去史委員会は、「金学義事件」を代表的な検察積弊事件と指定し、大検察庁に「過去史真相調査団」を設け、事件を担当させた。証人が多数登場し、動画証拠もあるにもかかわらず、二度も「容疑なし」という結論が出た背景について、朴槿恵政権の大統領府や法務部、検察上層部がつながっていたためと推測したのだ。