(田中 美蘭:韓国ライター)
5月10日、文大統領の就任4年目に当たる演説が行われた。30分間にわたる演説では、4年間の自身の政権運営についての所感や国民に向けたメッセージ、そして残り1年を切った任期での抱負などが語られた。演説はライブで中継され、病院の待合室ではテレビ演説に目を向けている高齢者の姿も見られた。
文政権の現状を見れば、支持率の低下が止まらず「レームダック状態」と言われている。4月のソウル・釜山市のダブル市長選挙で与党が大敗を喫したことで風当たりは強まるばかり。「最悪」とも言える状態の中、文大統領は何を語ったのであろうか。
4年前からは想像できない国民の冷たい視線
2017年5月9日、韓国憲政史上初めてである現職大統領の罷免に伴って実施された第19代大統領選挙。朴槿恵前大統領や側近が引き起こした不正疑惑への強い失望感から、左派政党「共に民主党」の候補だった文氏が圧勝し、5月10日に大統領に就任した。
朴前大統領や右派に対する嫌悪や拒絶感の反動から、文大統領にかかる期待感は強く、就任から1カ月後の世論調査(韓国ギャロップ)では、82%の人が「評価できる」「期待する」とポジティブに回答していた。
それが今となっては相次ぐ疑惑や近しい人々の不正発覚、摩擦ばかりを生み出す外交姿勢など、就任当時の文大統領に対する期待感は既に霧消している。韓国では、大統領の就任末期になるとスキャンダルや失政によって支持率が低迷し、苦しい政権運営を強いられることが多いが、文大統領に対する国民の視線はことのほか冷たい。4年前の就任時に、ここまで叩かれることになろうとは、想像できなかっただろう。