5月10日、大統領就任4年の特別演説をする文在寅大統領(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)

 5月10日、文在寅大統領は就任4周年を迎えた。文大統領は同日、青瓦台で特別演説を行い、国民経済、新型コロナ、南北関係について語った。ただし日韓関係に関する言及はなかった。

 客観的に見れば、文在寅政権のこの4年間は国内の分断を広げ、北朝鮮外交でも失敗を繰り返してきたが、その反省は一向にない。この日の特別演説も、就任式の演説同様、実現性のない美辞麗句を並べたものであったと断じざるを得ない。

文政権の4年間は「自画自賛」と「言い逃れ」、「ネロナンブル」の繰り返し

 世論調査会社リアルメーターが5月3日から7日にかけて実施した世論調査では、肯定的評価が前週より3ポイント上がって36.0%、否定的評価は2.3ポイント下がって60.3%であった。就任4年目の時点での評価としては歴代政権で最も高い支持率だそうで、政権の実績からすれば不思議なことである。

 しかし、よく見ると肯定的評価が上がったのは文在寅氏のもともとの支持層である中高年層だけの現象のようだ。40代の支持率が9.5ポイント上がって50.4%、50代が8.6ポイント上昇して42.4%となっている。ソウル・釜山市長選挙の「悪材料出尽くし」ということか。その半面20代、60代、70代の肯定的評価はいずれも20%台である。高齢層はもともと保守的であったが、以前は支持層が多かった20代が離反したところに、文政権に対する現実的な評価が現れている。

 文政権の国内政治は、「自画自賛」と「言い逃れ」、「ネロナンブル」(「私がすればロマンス、他人がすれば不倫」=ダブルスタンダード)の繰り返しであった。そのため数々のスキャンダルに見舞われながらも一切反省はない。失政のしわ寄せは、もともとは文在寅大統領を支持してきた20代に集中しており、若年層の文政権離れが加速している。反対に40代、50代の一部は職を失っているが、多くは既得権者となり、不動産や株などの資産価値の高騰で潤っている。こうした世代間格差による社会の分断が加速している。

 企画財政部は7日、経済報告書「文在寅政府4周年、その間の経済政策推進成果及び課題」を発表した。その中身は「韓国企業は政府の規制撤廃でいつもより経営環境が改善され、国民も高まった所得に支出負担は低くなり、いつもより質の高い暮らしを営んでいる」といった、お得意の自画自賛の連発だ。しかし、政府の状況認識と国民目線には大きなギャップがあると言わざるを得ない。