韓国で、文在寅(ムン・ジェイン)大統領を非難するビラを配った男性が「侮辱罪」の疑いで起訴される羽目になった。侮辱罪は親告罪である。批判された本人か、その人が委任した人物が告訴してはじめて捜査が始まる。つまり大統領が国民を告訴したことになる。いま韓国では大統領のこの行為に対する強い非難が巻き起こっている。
「ビラ撒いただけで告訴」は大統領本人によるものか
起訴のきっかけとなった事件のあらましはこうだ。
2019年7月17日、保守派青年団体「ターニングポイント」代表のキム・ジョンシク氏(34歳)は、国会敷地内の噴水台の前で、文在寅大統領を批判するビラを配った。そのビラは親日派の一掃を掲げる左派・歴史団体の「民族問題研究所」をパロディーにしたチラシで、表には「2020年応答せよ、親日派の子孫たちよ」というスローガンとともに、文在寅大統領、朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長(当時)、洪永杓(ホン・ヨンピョ)元民主党院内代表らの父親が日帝植民地支配当時に揃って親日行為をしたという主張が書かれていた。旭日旗模様の背景の上に、「文在寅統領の父親のムン・ヨンヒョンは日帝強占期当時、名門高の咸興農高を卒業後、興南市役所農業係長を務めた」という主張も書かれていた。
チラシの裏には「北朝鮮の犬、韓国大統領・文在寅の真っ赤な正体」という文書とともに、関連記事を掲載した日本の某雑誌の表紙写真が入っていた。