その後も文大統領は自分に対する批判はもちろん、侮辱でさえも「表現の自由」として認めるという立場を何度も明らかにしてきた。

「国民はいくらでも権力者を批判する自由がある。それで国民の不満が解消されて慰めになればそれも良いことではないでしょうか」(2017年2月、大統領候補時代にJTBC放送局の座談会に出席した時)

「大統領を侮辱する程度は表現の範疇で認めてもいいです。大統領の悪口を言って気分がほぐれるなら、それもいいことです」(2020年8月27日、宗教指導者との懇談会)

「表現の自由を尊重」は結局口先だけか

 しかし、文在寅大統領がこれほど強調してきた「表現の自由」だが、実際には文政権の下ではまったく守られていない。文大統領が宗教指導者を大統領府に招いて表現の自由を強調したまさにその時刻、「文在寅は共産主義者」と批判したコ・ヨンジュ前放送文化振興院理事長は高等裁判所から名誉毀損で有罪判決を受けていた。同事件は、文大統領が2015年に自ら告発した事件で、一審では「悪意的な謀略の意図がないものと判断される」と無罪と言い渡されている。

 2019年11月、忠清南道天安に所在した檀国大学のキャンパス内の建物1階に文在寅大統領の親中政策を非難するビラを貼った20代の青年は、建造物侵入罪で起訴され、前科持ちとなった。事件の被害者と言える檀国大学側は、「処罰を望まない」という意思を何度も警察に伝えたが、警察は全く意に介さず、起訴意見をつけ事件を検察に送検した。檀国大学側は裁判で、「表現の自由を抑圧してはならない」「今回のことで学生(青年)が被害を受けないことを望む」と述べるなど、青年を積極的に擁護したにもかかわらず、裁判所は学生に対し罰金50万ウォンの有罪判決を下した。