4月16日、ホワイトハウスでの首脳会談後に共同会見に臨む菅義偉首相(左)とバイデン大統領(写真:AP/アフロ)

(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)

 菅義偉総理が訪米して4月16日に行われた日米首脳会談では、米国による「対北朝鮮政策の見直し」が重要なテーマの一つであった。

 これに先立つ15日、ホワイトハウスの高官は、米国の対北朝鮮政策の見直しについて日米のハイレベルで協議が行われてきたが、「(両首脳が北朝鮮政策の見直しの結果を)締めくくる機会を得るだろう」として、日米首脳会談を踏まえて対北朝鮮政策を決定する可能性を暗示していた。

菅・バイデン会談に危機感覚えた文在寅

 こうした事態に危機感を覚えたのが韓国の文在寅大統領である。文在寅大統領はニューヨークタイムズ(NYT)のインタビューに応じ、対北朝鮮について強い口調で米国に注文を付けてみせた。それは、「北朝鮮に対して厳しい姿勢で臨むべきだ」とする日本の立場とは相容れないものだった。

 4月27日は、板門店で文在寅大統領と金正恩総書記による初めての南北首脳会談が行われてちょうど3周年にあたる日だ。この3年間の評価について韓国の「中央日報」は、「その合意のほとんどが履行できていない」と厳しく評価したが、それでも文在寅政権、特に左派色の強い李仁栄(イ・インジェ)統一部長官は北朝鮮への支援、交流に熱意を示している。

 だが考えてみてほしい。北朝鮮との協力、交流が進展しない最大の理由は「北朝鮮に非核化の意思がないこと」であり、文在寅大統領が米国に求めている対北朝鮮政策は、この重要な点を無視しているのだ。

 それでも日本と米国が、この韓国の意向を無視し、対北朝鮮政策を先導できないのは、北朝鮮との関係で韓国の協力が極めて重要だからである。それゆえに「韓国をどのように導いていくのか」が日米には重い課題となっている。