ビラ散布禁止法は「金与正下命法」

 統一部が主導し、与党が単独で国会で評決処理した「対北ビラ禁止法」(「南北関係発展法改正案」)は、米国議会も大きな懸念を示している代表的な表現の自由侵害法だ。ビラやUSBメモリなど、情報を盛り込んだ物品を北朝鮮に気球などをつかって飛ばすと3年以下の懲役刑や3000万ウォン以下の罰金刑に処するという内容である。2020年6月4日、金与正(キム・ヨジョン)北朝鮮第1副部長が北朝鮮に流されてきたビラを強く非難し、「法律でも作って最初から事を起こさないように取り締まれ」と発言してからわずか4時間後、統一部からビラ散布を禁じる方針を明らかにされた。そのためこの対北ビラ禁止法は「金与正下命法」と揶揄されている。

 ほかにも、5・18民主化運動を歪曲・誹謗すれば5年以下の懲役と5000万ウォン以下の罰金に処される「5・18歪曲処罰法」(「5・18民主化運動などに関する特別法改正案」)は、昨年12月に国会で成立し、施行を控えている。

 日帝時代に対する肯定的な解釈や発言を規制する親日賞賛禁止法、歴史歪曲禁止法などもすでに国会に発議されている。文在寅政権末期の最優先課題である「マスコミ改革」を向けて、与党は、偽のニュースについて懲罰的罰金を科すなどの内容を骨子とする「マスコミ改革3法案」を今年中に国会で成立させる覚悟だ。

 このように、例を挙げればキリがない文在寅政権の表現の自由侵害事例。これらの事実こそ、「人権弁護士」出身の文在寅大統領が、政権の利益と衝突する民主主義や人権の価値にどれほど無関心なのかを如実に物語っていると言えるだろう。