2018年初めに最高潮に達した韓国のMeToo運動(写真:AP/アフロ)

 文在寅政権の発足と軌を一にして燃え上がる韓国のフェミニズム運動「Kフェミニズム」。だが、女性運動家の中心は「反米・反日・自主統一運動」を基調とするNL系であり、これとラディカルフェミニズムを結合したものが「Kフェミニズム」の本質だ。女性の生活向上ではなく、上層部のエリート女性の権力と権限を強化する手段に過ぎない。韓国の作家でコラムニストのオセラビ氏がKフェミニズムを斬る。

(オセラビ:作家・コラムニスト)

 ソウルと釜山(プサン)の市長補欠選挙が4月7日に行われた。結果は、巨大与党である「共に民主党」の惨敗。この結果を巡り、韓国社会は大きく揺れ動いている。一つの事件とも言えるほど、社会に大きな波紋を投げかけたのだ。

 今回の投票における特徴は、20代男性と20代女性の投票行動が対照的だった点が挙げられる。注目すべきは20代男性だ。前回の記事(韓国社会を引き裂く「Kフェミニズム旋風」の病理)で書いたように、韓国にフェミニズム旋風が巻き起こってからの7年間、ジェンダーを巡る議論で守勢に回っていた20代男性が野党に票を投じることで、親フェミニズム政策を掲げてきた民主党に痛撃を与えた。

 20代、30代男性の野党候補への投票率は、それぞれ72.5%、63.8%と高水準だった。一方、20代女性の投票率は親フェミニズム政党である与党で44%、フェミニストの候補者で15.1%という結果だった。

 今回の補欠選挙は、2020年4月と7月に、ソウル市長と釜山市長が相次いでセクハラ事件を起こしたために実施されたものだ。釜山市長は辞任し、ソウル市長は訴えられて自ら命を絶った。朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長は、韓国で最初の男性フェミニストであり、韓国の女性人権運動に大きく貢献した人物である。だからこそ、彼の自殺は世の中に大きな衝撃を与えた。ちなみに、彼は歴代最年長のソウル市長であり、次期大統領選挙に出馬する準備をしていた。

 朴元淳市長の死は、左派フェミニスト陣営全体を驚愕させた。女性運動の永遠のパートナーであった朴元淳市長のセクハラ事件が発覚すると、与党のフェミニスト女性議員たちは一斉に沈黙を通した。この「選択的MeToo運動」、あるいは「味方のセクハラ事件は知らんぷり」という態度は非難の的になった。言うなれば「悲しいアイロニー」だ。フェミニズム運動の先頭に立っていた与党の女性国会議員の偽善的な性倫理に対するダブルスタンダードは多くの人々に非難されるに値する。