同調しない女性を苦しめた「脱コルセット運動」
一方、大学の教壇に立つ女性学者にとっては好機となった。新聞や雑誌へのコラム寄稿、セミナー、討論会、著述活動など、女性団体と連携してさまざまな仕事が舞い込んだ。2017年に韓国のフェミニズムはジェンダー対立が激化し、大衆文化の領域へと広がっていった。
ヤングフェミニストたちは、ゲーム、ウェブ漫画、ヒップホップなどに目をつけた。大衆歌謡、特にヒップホップのラップから女性嫌悪や性差別などの表現を探し、ラッパーたちと摩擦を起こした。それだけでなく、バンドが歌っていた過去の曲からもそれらの表現が含まれた歌詞を見つけ出し、攻撃した。有名なウェブ漫画家は、連載中の作品のシーンが標的になり、女性嫌悪主義者として追い込まれた。
ゲームも同様である。ゲームに出てくる女性キャラを巡り、女性蔑視や性的対象化に関する議論が相次いだ。女性キャラのセリフが性差別的だの、特定の体の部位を強調するポーズを描写しているだのとの批判に、男性ゲーマーたちが反発する事例も珍しくなかった。そのほかにも、チームプレーをしていた男女間で起きた性差別、セクハラ発言や言葉の暴力など、頻繁に問題が生じた。
フェミニストたちは文化・芸術界とサブカルチャー系の検閲官となり、気に入らないもののリストを作り続けた。これにより、韓国社会のあちこちで男女間の溝が深まり、捜査機関に対する通報や告訴が横行するようになる。
2017年の半ばになると、社会が求める女性らしさへの抵抗、いわゆる「脱コルセット運動」に火がついた。この運動の主役は女子大学生だったが、中学生の女子まで参加し、女性が追い求める「美」に挑戦した。
女性は美しくあることを強要されており、これは社会的に男性の権力に規定された家父長制的コルセットだとフェミニストたちは主張する。若い女性は化粧品を捨て、花柄の服をはさみで切り刻み、髪を短くカットしたり剃ったりして、脱コルセット運動に参加した。大学の掲示板に張り紙をし、SNSにハッシュタグをつけることで、この運動は急速に拡散した。
おかげで騒動が絶えなかった。一編のブラックコメディ、お騒がせ喜劇のような脱コルセット運動は、これに同調しない大多数の女性を苦しめたのだ。ラディカルなフェミニストたちはまるで軍隊の将校のように振る舞い、脱コルセット運動をリードする。これは2017年から2018年にかけて続いた。