(田中 美蘭:韓国ライター)
大統領選挙まであと1年を切った韓国。常々伝えられているように、文在寅大統領は支持率低下や国民の強い不満などに直面し、苦しい政権運営を強いられている。大統領本人を含め、与党「共に民主党」はこの苦境を乗り越えるため、大統領選に向けた候補者選びや選挙戦略を練り直している。一方、野党「国民の力」も4月に行われたソウル、釜山の市長選挙での勝利を起爆剤に、大統領選への弾みをつけたいところだ。
現在までのところ、次期大統領候補として目ぼしい候補がいるとは言えない状況だが、与党側の候補者と目されている議員から大統領選挙を意識したと思われる発言が相次いでいる。
来年の大統領選挙に向けた動きはまだ本格化していないが、現段階で与党側では有力とされる3人の名前が挙がっている。
一人目は、現在、京畿道(キョンギド)の知事を務めている李在明(イ・ジェミン)氏。過激な発言などから米国のトランプ前大統領になぞられ「韓国のトランプ」などと称される人物だ。文氏と同様に日本を「軍事的脅威」と評し、慰安婦問題や福島第一原発の処理水放出についても常に敵対的な姿勢を出している。
反面、道知事選挙の際に妻が公職選挙法や名誉毀損の容疑で送検された他、自身も女優キム・ブソン氏との不倫関係をキム氏に暴露されるなど、私生活でのスキャンダルが多い印象がある。
次には李洛淵(イ・ナクヨン)氏。政治家になる前に東亜日報の記者として東京に赴任するなど、日本に精通している李氏は「知日派」とされる。与党の中では文大統領の後継として最も有力視されているが、その手腕は未知数なところが多い。
そして、文政権下で4月まで首相を務めた丁世均(チョン・セギュン)氏も有力候補に挙げられる。4月に首相を辞したのは大統領選挙に臨むためといわれている。丁氏は韓国政界では重鎮で、70歳という年齢から大統領就任を「政治家として最後の花道」にしたいと考えているようだ。ただ、新型コロナワクチンの調達に関して「自国での供給が優先」とした米国を「チンピラ」呼ばわりして批判するなど発言にクセがある。