ヨーロッパの地図を広げてみる。広大なユーラシア大陸の、いちばん左下。ヨーロッパとアフリカを隔てるジブラルタル海峡から少し西に上ったところにその小さな街はある。

 四方を海に囲まれたカディスの人口は約11万人。南の果てともいえるこの地をイベリア半島とつなぐのは一本の海の中道だ。スペイン各地からの列車がゆっくりと海の間を中心部へと進んでいく。

スペイン南西部の港湾都市カディス

 旧市街に足を踏み入れれば、そこにある南国の景色の中に自然に入り込むことになる。石畳と椰子の木。南の壁の鮮やかな色彩が空の蒼さに溶け込んで、道沿いに連なるバルのテーブルの上、並んだグラスの水滴が涼しい。

筆者撮影

 巣作りの季節を迎えた海かもめが飛ぶその下で、潮の香りと陽光に包まれ地元民が午後のひとときを楽しんでいる。コロナ禍で外国人観光客が激減したけれど、今ほど観光地化されていなかった昔みたいだな、と懐かしむ人もいる。

筆者撮影

開幕時は降格候補

 今年、のどかなこの地はスペインを驚かせることになった。街のサッカークラブが予想外の躍進を見せたからだ。

 今シーズンからスペイン1部に昇格したカディスは並いる強豪を前に堂々と戦った。予算やファン数では雲の上の存在のレアル・マドリードとバルセロナを破り世間を騒がせると、降格候補だったにもかかわらず5月上旬に早々と1部残留を決めた。

 2部から上がってきたばかりのクラブは戦力的にも財政的にも脆弱で、残留というのは簡単ではない。コロナ禍で無観客ということもあり入場料収入もない。ビッグクラブとは違ってその他の収入も限られている。共に今季昇格したウエスカとエルチェは、残留を最終節に持ち越すことになった。カディスの早期残留決定は今季のリーガのトピックのひとつでもあった。