FCバルセロナの会長選でのラポルタ氏当選を報じる地元紙(筆者撮影)

 街角の新聞スタンドに、両手を掲げるスーツ姿のジョアン・ラポルタの笑顔が溢れていた。

“ラポルタが大量得点で圧勝”

 バルセロナの新会長選挙の結果を報じるムンド・デポルティボ紙のタイトルだ。

 7日に行われたバルサ会長選の結果は、ラポルタが得票率54.28%(34184票)と大差で会長の座を手にした。

 58歳のラポルタにとっては2度目の当選だ。彼は2003年から2010年まで会長を務め、バルサ黄金期の礎を築いた。あの輝かしい時代をもう一度、そんな思いにかられ票を投じた人も多かったはずだ。全盛期のロナウジーニョ、チャビ、イニエスタ。若きメッシに、監督グアルディオラ。バルサの歴史上、最も輝かしかった時代を象徴する人物はいずれもラポルタの第一政権時代に躍動し、クラブを世界の頂点へと押しあげた。

 今回の選挙でラポルタ陣営の背中をおし大勝へと導いたのは、そんな甘いノスタルジーだ。

対立候補に圧勝

 想定どおりの結果でもあった。TV3や地元紙の事前予想でもラポルタは圧倒的に有利とされていた。ラポルタが持つ強烈なノスタルジーとの差別化を図るために「未来」というスローガンを掲げた第二候補のビクトル・フォンも得票率は29.99%に止まった。3番手のトニ・フレイチャは8.58%だ。

 ある程度結果が予想されていた選挙だったが、今回も街はとにかく盛り上がった。

 バルサ会長選というのは、数年に一度訪れるバルセロナの一大イベントである。

 市バスの車体広告に貼られたラポルタがそこらじゅうを走っている。アシャンプラ地区の建物の壁面広告には大きなビクトル・フォンの「未来へ」というロゴ。ラポルタは首都マドリードでも、レアル・マドリードのスタジアム、サンティアゴ・ベルナベウ付近のビルに巨大な広告を打ち「またお会いする日を楽しみにしている」と挑発的な文句を掲げた(これはバルサの選手にいたく気に入られたそうだ)。

 メディアを使ったインタビューや討論も行われ、それらはひとつのエンターテインメントと化す。昨年10月に前会長のバルトメウが辞任して以来会長不在だったこともあり、ファンの話題もしばらくの間は次期会長についてだった。