久保建英。ヘタフェに移籍後、期待されたような活躍はまだできていない(写真:Pressinphoto/アフロ)

 その日、久保建英がピッチに立ったのは後半36分のことだった。

 ラ・リーガ第24節のベティス戦、ロスタイムも含め久保に与えられたのは12分間だ。1点を取ろうと前を向くも、短い時間の中でできることは限られていた。2度あったゴール前でのプレーも、シュートにはつながらなかった。敗れたヘタフェはこれで4連敗。5試合連続で無得点と長いトンネルから抜け出せずにいる。

 久保にとっては3試合連続のベンチスタートだった。ヘタフェのボルダラス監督は「チームは守備のインテンシティを失ってしまった」とし、ここ3試合は久保やMFアレニャを外した守備的なシステムを採用。しかし結果には繋がっておらず、監督解任論も囁かれるようになった。

 久保がヘタフェにやってきて1カ月半。本国スペイン、そして日本メディアの中にはヘタフェへのレンタル移籍は失敗だとする論調すら出てきた。あらゆる批判や疑念が19歳の背中に投げかけられている。

約1カ月ぶりに先発出場したゲームで評価を一気に高めたマジョルカ時代

 ベティスの緑色のユニフォームと対峙する久保を見ていて、ふと思い出したことがある。

 それは今からちょうど1年前のこと。昨季の2月21日、久保はマジョルカの一員として同じベティスのスタジアムに立っていた。

 コロナウイルスの蔓延によりリーグ戦が中断される数週間前で、試合には4万7000をこえる観客がかけつけていた。