(田丸 昇:棋士)
2020年の賞金・対局料ランキング1位は?
日本将棋連盟は2月上旬、将棋棋士が2020年に獲得した賞金・対局料ランキングのベスト10を発表した。
1位は、豊島将之竜王(30=叡王と合わせて二冠)の1億645万円。 2年連続の1位で、初めて1億円を超えた。
2位は、渡辺明名人(36=王将、棋王と合わせて三冠)の8043万円。3位は、永瀬拓矢王座(28)の4621万円。4位は、藤井聡太二冠(18=棋聖、王位)の4554万円。5位は、広瀬章人八段(34)の3241万円。6位は、羽生善治九段(50)の2491万円。7位から10位は、2千万台から1千万台と続く。
藤井聡太の賞金・対局量の推移
注目の藤井二冠は、2017年に棋士デビューから無敗で29連勝の最多記録を打ち立てたが、対局料が全般に低かったので、獲得額は約700万円(推定)にとどまった。2018年は朝日杯オープン戦の優勝などで2031万円(12位)、2019年は銀河戦の優勝などで2108万円(9位)と、ともに2千万円台となった。
そして、藤井は2020年に棋聖と王位のタイトルを最年少記録で獲ったことで、獲得額は前年の2倍に増えた。それぞれのタイトル賞金は約1千万円なので、その金額が積み重なった。
8タイトルのうち、竜王の賞金は4400万円と最も高額である。名人の賞金は非公表だが、やはり高額である。つまり、竜王、名人をはじめ、タイトルを獲得した棋士たちがランキング上位に並ぶことになる。
ところで、藤井が獲得した約4500万円について、「18歳なのにすごい!」という驚きの声がある一方で、「4位なのにそれだけ?」という見方があるのも事実だ。藤井の獲得額は高いのか、安いのか?
日本将棋連盟の収入源
野球、サッカー、テニス、バスケットなど、世界のプロスポーツでは、トップ選手が年間で10億円以上を獲得する例は珍しくない。日本のプロ野球と比べると、藤井と同じ4千万台の年俸の選手は中堅クラスである。これらの差額は、どうして生じるのか・・・。
前記のプロスポーツでは、テレビ局やインターネット番組からの放送権料、世界的な企業からの宣伝広告費、何万人もの観客の入場料など、巨額の収入を得るビジネスモデルによって成り立っていると思う。運営会社がチームの赤字を補填することもある。
日本将棋連盟も主催する棋戦で、NHKやABEMAからの放送権料、企業からの協賛を得ているが、前記のプロスポーツとは金額面ではるかに及ばない。将棋ファンを集めた公開対局は、東京ドームのような大会場で行われない。また、公益社団法人の将棋連盟は、賞金や対局料を大盤振る舞いして赤字にするわけにはいかない。
将棋連盟の主要財源は、新聞社、テレビ局、企業、自治体などとの棋戦契約金である。契約金の使途の内訳は、優勝賞金は約1割、ほかの賞金や対局料は約7割、運営費は約2割。
そうした原則に基づいた「身の丈」に合った制度によって、前記の賞金・対局料ランキングの水準となっている。
なお、そのランキングには、指導料、出演料、解説料、原稿料などの副収入は含まれていない。