起点は共通一次と自営業の消失

 以上、「普通シンドローム」の形成は「共通一次試験」と「自営業の消失」が大きく働いたのではないか、というのが私の仮説だ。共通一次試験は大学・高校・中学で偏差値による序列をもたらし、反発として校内暴力が生じた。校内暴力が鎮圧された後は、序列化に屈するのが「普通」の子どもである、という圧力が決定的に。

 そして2000年代に入って、大店法の廃止により商店街が消滅、超円高で中小工場が姿を消した。中小企業、商店など自営業が減少し「家業を継ぐ」「地元企業で働く」という選択が難しさを増し、なるべく大きな企業への就職が目指されるようになった。

就職まで続く「普通シンドローム」

 大きな企業に就職しようとしたら、よい大学へ。そのためにはよい高校へ。そのためには中学校では目立たないように「普通」に振る舞う。先生に目をつけられないように。ある程度の規模の企業に「就職」したいなら、青年も子どもも「普通」からはみ出ないようにと、戦々恐々となる。

 こうして、「普通シンドローム」が日本の病態として定着したのかもしれない。