――なぜか「治療のプラスになる食事」と言われるものは、糖質制限や菜食といったストイックなものになりがちな印象があります。

大津 多くのがん患者さんやそのご家族を診てきた中で、ストイックな考え方に傾倒してしまう時期というのは確かに見受けられます。現場の感覚では、治療が順調な時はあまりそうならず、患者さんが痩せてきた、再発した、転移が広がったというような順調でない時に起死回生の策として取り組まれる印象がありますね。怪しい治療やサプリメントに頼りたくなる時期でもあります。しかし、状態がよくない時は体力が落ちていることが多いので、自己流の食事療法で状態の悪さに拍車をかけてしまい、QOLを落とすだけでなく命にも影響しかねません。

 一般的にも「免疫力がアップし、すべてが健康になる糖質制限」のような単純な図式が流行っていますが、合う人合わない人がいるはずですし、患者さんにも個体差やがんの種類、進行の度合いなど違いがあります。すべての病気が治るような真理は存在しないと受け止めつつ、ご自身に合っているのかを自己判断せずに、専門家に相談して下さい。相談場所は今かかっている科だけでなく、緩和ケア外来や各がん診療連携拠点病院にあるがん相談支援センター、がん情報サービスサポートセンター(国立がん研究センターがん情報サービス)などもあります。

がん相談支援センター https://hospdb.ganjoho.jp/kyotendb.nsf/fTopSoudan?OpenForm
がん情報サービスサポートセンター https://ganjoho.jp/public/consultation/support_center/guide.html

がん治療中は十分なエネルギー摂取が重要

――がんの種類や進行の度合いは人それぞれで個別性の高いものですが、あえて食でがん患者が気をつけるとしたら、どんなことでしょうか。

大津 しっかりエネルギー(カロリー)を取って、痩せすぎないようにするのが最重要だと思います。特にがんが進行すると、がん自体による食欲不振、治療も影響する吐き気や口内炎などによる食べにくさから摂取不足になるだけでなく、食べたものを十分に取り込めなくなる代謝障害が起きます。二重にエネルギーを摂取するのが難しくなるので、是が非でも総エネルギー量は死守してもらいたいのです。

 糖質制限食は総エネルギー量を変えずに糖質を減らそうというものですが、脂質やタンパク質でカロリーを稼ぐのは案外難しくて、結局は総エネルギーが減ってしまっているケースが多く、栄養摂取に二重の障害が起きているがん患者さんには危険です。痩せて体力が落ちると、抗がん剤の副作用が強く出ることもあり、治療が続けられなくなってしまうこともあります。