すごいところ その3「設計されて創られた」
医薬品の多くは、天然の中から発見された役立つ物質だったり、生物が利用している物質だったりします。
有名な例としては、青カビから偶然に発見された抗生物質ペニシリンや、地中の細菌から見つかった寄生虫薬イベルメクチンがあります。ペニシリンの発見者アレクサンダー・フレミング氏(1881-1955)と、イベルメクチンの大村智・北里大学特別栄誉教授(1935-)は、ノーベル生理学・医学賞を受賞しました。
また伝統的手法のワクチンが、生物やウイルスを用いていることは、述べたとおりです。
しかしこのmRNAワクチンは、ウイルスの遺伝情報を参考にして、計算機上で設計されたものです。
SARS-CoV-2の遺伝情報を解析し、スパイクを作る部分を同定して切り出し、ヒトの細胞内に送り込んで機能させるため巧妙な仕組みを付け加えて創ったものです。(フォトショップで画像の汚れや邪魔物を取り除くように、遺伝情報のうち不要な部分を編集したりきれいにしたりもしています。)
天然自然産の医薬品や生物由来の物質は、どうしてそれが働くのか分からないまま使われたりします。元来、薬とはそういうものでした。
しかしmRNAワクチンは、隅から隅まで働きが分かっています。そのように創られたからです。
このように設計されたワクチンに、今後もしも不具合や性能不十分な点が見つかったら、それを計算機上で改良することができます。これは天然ワクチンよりもずっと便利です。
こうして目的に応じたワクチンが設計されるのを目の当たりにすると、新薬の発見を偶然に頼り、なぜ効くのか分からずに使っていた時代の終わりを感じます。
(そしてBNT162b2が、企業秘密や国家機密として独占されるのではなく、公開されてダウンロード可能なところも好感が持てますね。)