2023年のノーベル生理学・医学賞は、米ペンシルベニア大学のカタリン・カリコ非常勤教授(68)と同大のドリュー・ワイスマン教授(64)が受賞しました。授賞理由は「新型コロナウイルスに対するmRNAワクチンの基盤技術開発」です。「mRNA」とは、遺伝情報を伝える物質「メッセンジャーRNA(mRNA)」のことで、これが新型コロナウイルスのワクチン実用化に結びつきました。mRNAワクチンの画期性について、JBpressで2021年1月8日に公開した記事をあらためてお届けします。(JBpress)
(小谷太郎:大学教員・サイエンスライター)
2020年は新型コロナウイルスの年でした。私たちの生活は激変し、医療従事者は疲弊し、商店は次々閉店しています。
これまでファビピラビル(アビガン)やレムデシビルに始まって、BCGやうがい薬まで、さまざまな医療法や商品が、新型コロナウイルスに有効と報じられ、私たちをぬか喜びさせマーケットを混乱させては、ひっそりと話題から消えていきました。
このパンデミックに終わりはあるのでしょうか。こんな状況で新年を祝っていていいのでしょうか。すっきりしない気分で正月を過ごしたかたも多いと思います。
そこでここでは新年らしい、おめでたい話題をお届けします。人類の皆様、お待たせしました、新型コロナウイルス問題の根本的な解決の見通しです。
2021年は世界規模の疫病を制圧した年として、人類が感染症を征する新しいテクノロジーを手にした瞬間として、記憶されるでしょう。
はっきりいって、新型ワクチン、相当すごいです。
ワクチン革命
新型コロナウイルスを喰い止めるため、235種のワクチンが2021年1月5日現在開発中で、そのうち63種が現在ヒトに試されています*1。国によっては、すでに承認されたものや大規模な試験的接種が始まったものもあります。
それらのワクチンのうち、開発も早く行なわれ、効果も期待されているものに、「mRNAワクチン」と呼ばれる新型のワクチンがあります。「m」は「メッセンジャー」と読んだりします。
mRNAワクチンは今回初めて投入される全く新しい医療テクノロジーです。21世紀の先端科学の結晶です。