すごいところ その2「配列が公開されている」
BNT162b2はなんとその構造が公表されていて、mRNA配列を誰でも読むことができます*3。こんな感じです。
AGAAΨAAAC ΨAGΨAΨΨCΨΨ CΨGGΨCCCCA CAGACΨCAGA GAGAACCCGC ・・・
これは衝撃的です。ワクチンというものが文字列として表現できるのです。
この配列があれば、世界のどこの研究室や工場でも、このワクチンを再現できます。
生きた病原体を使うワクチンを生産するには、開発者から分けてもらった株を工場に運び、培養させる必要があります。
しかしmRNA配列ならばダウンロードすれば製造できます。運ぶ必要がありません。たとえ火星植民地に流行が飛び火しても、ワクチンを通信で送れるのです。
BNT162b2が文字列として表されることに加えて、それが全世界に向けて公開されていることも驚きです。
製造法が秘密の薬品は、もちろんその製造元しか作れません。
しかし配列が公開されているということは、理論上は、知識と設備があれば誰でも作れるということです。
また誰でもこれを解析したり、研究したり、改善点を発表できるのです。この公開情報を使ってBNT162b2の配列を解析し、解説する文書も出てきています*4。
(ワクチン配列が公開されて誰でも解析できるこの状況は、オープンソースの出現を彷彿とさせます。筆者はLinuxに触れた時のような衝撃を覚えました。)