コロナ収束後に就職氷河期が生まれるのか?(写真:AP/アフロ)

 新型コロナウイルスの感染拡大によって就職活動も変化の渦中にある。このような状況で、再び就職氷河期が到来するのか。そして、地方自治体や地方議員はどのようなことをするべきか。就業支援施設の運営に携わる藤井哲也氏が提言する。(JBpress)

※本記事はPublicLab(パブラボ)に掲載された「激変する雇用環境の中で、再び就職氷河期を生み出さないために」を再構成したものです

(藤井哲也:株式会社パブリックX代表取締役、
しがジョブパーク就職氷河期世代担当)

 新型コロナウイルスの感染拡大によって働き方が激変しています。社員の在宅勤務の対策をいち早くとったGMOインターネットグループは、コロナ収束後も在宅勤務を継続する方針で、週に何度か出社して業務マネジメントとエンゲージメント維持に取り組むということが報じられています。ハンコを押すためだけに出社せねばならないことが社会問題になっていますが、大半の仕事が、実は在宅でできることが白日の下に晒されました。

 就職活動も変化の渦中にあります。会社説明会、面接、そしてインターンシップもオンライン化が劇的に進んでいます。筆者が運営に関わる自治体の就業支援施設でも、求職者からのキャリアカウンセリングはZoomで行うことが当たり前になっています。緊急事態宣言が解除されてからも、就職活動のオンライン化の流れはおそらく止まらないでしょう。

地方でも合同企業説明会のオンライン化が進んでいる。この流れはコロナ後も恒常化するのではないか

就職氷河期を生み出した原因

 そんな激変する雇用環境の中で、懸念される就職氷河期は訪れるのでしょうか。その可能性を検討するために、まず就職氷河期世代(一般的に1993年から2004年に学校を卒業して社会に出た世代のことを言います)が生まれた原因・背景を振り返ります。

原因1:20歳代のキャリア基盤形成期に就労環境が悪い状態が続く

 就職氷河期世代が形成されたのは、社会に出たタイミングで就職環境が悪かった、というだけではなく、多くの人のキャリア基盤を築く20歳代半ばまでの大切な時期を通じて雇用環境が悪かったことが大きな要因です。リーマンショック後も雇用環境は悪かったのですが、数年間で景気回復し、当時の若者はキャリア形成の遅れをなんとか挽回することができました。

原因2:非正規労働者に成長機会が与えられなかった

 非正規労働者は一般的に定型的な仕事を与えられることが多く、新たな価値を創造する仕事、マネジメントに関する仕事は正社員が担ってきました。正社員と非正社員の間に所得格差が生じるのは、正社員が役職に就く30代になってからです。役職や担当する職務が上がるに連れて正社員の給与は上がり、また成長機会も得られます。片や非正規社員は一向に給与は上がらず、与えられる仕事も変わらないため成長機会に乏しいまま時間が過ぎ去ります。

 就職氷河期世代の支援対象者は約100万人と政府は推計しています。不本意に非正規社員を続けてきた方は、なかなか正社員になることができずに来ました。2010年代後半に景気回復し、新卒採用では飲食接待によるリクルーティング活動も復活するなど、近年稀に見る労働力の買い手市場化が進み、非正規社員の待遇改善・正規転換も一定なされました。しかし、その実態は、非正規社員並みの処遇でありながら、雇用形態は正社員という“なんちゃって正社員”も数多く見られます。