この危機感のなさ、危機管理体制の不備は厳しく批判されねばならない。新型インフルエンザのときは、5月9日にアメリカから帰国した高校生らの感染が確認されたが、わずか1週間後の16日には、感染経路の不明な患者が発生している。今回は、1月16日の初の国内感染者確認から4週間後の2月12〜13日頃から感染源不明の感染者が続出し始めている。

 以上のように、対策が後手後手に回っているのが今回の危機管理の失敗である。

海外で定着「日本は第二の武漢」のイメージ

 クルーズ船は2月3日に横浜に寄港している。もし、専門家会議をそれ以前に立ち上げていたら、世界が呆れるような酷い結果にはなっていなかっただろう。さらに言えば、クルーズ船は未知の経験であり、特別に対策チームな専門家委員会があってよい。

 そこには、感染症専門家のみならず、国際法や船舶の専門家も入れるべきである。ダイヤモンド・プリンセス号はイギリスの船であり、運用はアメリカの会社が行っている。旗国主義などについては、国際法の専門家に諮る必要がある。また、船舶の構造、内部の生活環境などについては、船舶のエキスパートに聞くべきである。

 クルーズ船に関する特別専門員会があれば、途中で「ウイルス培養シャーレ」と呼ばれる状況になったときに、柔軟に方針を転換できたであろう。船内で働いている医療関係者や政府職員らの苦労は多とするが、政府の司令塔不足、対策の遅れは問題である。

 以上のような状態は、先述したように、東京オリンピック・パラリンピックの開催に暗い影を投げかけている。

 SARSは2002年11月16日に最初の症例が中国で出て、2003年7月5日にWHOが終息宣言を出している。SARSに似ているとされる今回の新型コロナウイルスは、12月に発生したので、SARSと同じなら8月まで続くことになる。しかも、日本は「第二の武漢」だというイメージが世界に拡散している。

 このような状況が続けば、有力選手の参加中止表明など、東京五輪の先行きが悲観的になってこよう。

 世界が協力して何とか新型コロナウイルスを封じ込めねばならないが、予断は許さない。残念ながら、五輪中止というシナリオも用意しておかねばならない状況になりつつある。

<お知らせ>
舛添要一YouTubeチャンネル『舛添要一、世界と日本を語る』がスタートしました。第1回では新型コロナウイルス問題について語っています。